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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
序章・魔法使いの結婚
4/110

引き合う魔力

今回も、2話投稿です。R2/9/4 22:00,9/5 0:00

「頼む!」


 氷尾長に狙われた一団が、刃のように鋭く凍った枝に苦戦している。ジンニーナがかけた『守りの壁』が、大分削られてしまった。


「どうぞ」


 赤毛の大女は、すぐに応えて魔法をかけ直す。


 鉄壁の魔女ジンニーナの魔力は膨大である。しかし、大技を使えばそれなりに疲れる。何が起こるか解らないので、常に6割は温存している。


 その為、守りの魔法は、一定ダメージが溜まればかけ直す。ダメージがなければ、3日位は持つ魔法だ。



「毒牙兎だっ、注意しろ!」


 斑の牙に毒を持つ、痩せすぎた奇妙な野うさぎが、集団で跳びかかってくる。モーカル魔法守備隊は極限まで絞った水で、魔物を次々貫いた。


「牙を焼け!」


 隊長の掛け声で、死んだあとまで猛毒を振り撒く、毒牙兎の牙に火を向ける。すかさずジンニーナが駆けつけて、火が牙だけを焼くように、周囲の木々や枯れ葉を魔法で守る。


 守りの魔法は、種類が多い。液体に濡れないもの、刃物に切られないもの、毒が効かないもの、等々。普通は数種類を身に付けて、せいぜい数時間5-6人に有効な魔法をかける。


 ジンニーナの魔法は、自ら編み出した『守りの壁』と言うものだ。なんでも守る。総てから守る。その気になれば、一生守る。規格外の大魔法だ。不運すら弾くので、世界魔法連盟監督局から使用制限を受けている。



 空が俄に暗くなる。


 風が強くなった。上空からばさりばさりと重たい羽ばたきの音が降ってくる。木々がざわめき、小石や枯れ葉が舞い上げられる。風に飛ばされた物が、守りの壁を打ち付ける。


 枯れ草のような臭いが漂ってきた。大枝だがビリビリと揺れる。巨大な岩が、ぐらぐらと地面からせりだす。魔獣達は、出鱈目に走り出す。



「ドラゴン」



 魔女がポツンと呟いた。

 守備隊の顔が青い。志向性のない魔獣の群れを捌きながら、退路を探る。下山する前に、ドラゴンの吐き出す炎で山ごと丸焼けになりそうだ。


 魔女が両手をあげた。眼を瞑り、眉間にシワを寄せる。

 守備隊全員の守りが、一時に強まった。



(もう少し、山全体に、広がれ)



 ジンニーナの集中が増す。守りの壁が広がって行く。

 山にいる総ての討伐隊が、大きな魔法に守られるのを感じた。

 さらに壁は膨らんで、しまいには山そのものを覆う。

 ドラゴンは、炎を数回吐き出すと、つまらなそうに跳び去った。



(何かしら。とっても暖かい魔力)



 壁を通じて、ジンニーナは心引かれる魔力に出会った。少ないが、力強く優しい魔力だ。


 触れ合う魔力は、循環を始める。ジンニーナから、相手に。相手から、ジンニーナに。



(これって、伴侶の魔力循環かしら)



 魔力同士が触れあって繋がり、切れ目のない環のような流れを作る。それは、その持ち主同士が、伴侶であることを示す。



(山頂で逢えるかしら)



 ジンニーナは、山そのものにかかる守りを解く。かけたままだと、自分達が守られるだけではなく、魔獣も守られてしまう。つまり、魔獣を討伐できなくなるからだ。


 再び山中の魔獣を討伐しながら、魔法守備隊は上へと移動して行く。ジンニーナは、逸る心を押さえながら、魔法が弱まった隊員の元を忙しなく走り回るのだった。

次回、騎士と魔女の対面

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