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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第一章・魔獣防衛都市ナーゲヤリの人々
35/110

城塞騎士団の使命

今回も1話です

 ジルベルト隊長以下、銀紐隊員5名は、団長室に押し掛けた。


「なんだ、お前ら、血相変えて」


 精鋭5名の殺気に、歴戦の猛者ハインリッヒ・ハインツ団長も、やや気圧される。


「われわれナーゲヤリ城塞騎士団の、使命は何ですか」


 ジルベルトが、団長に厳しく問いかける。


「魔獣防衛の最前線を担うことだが、どうした」


 団長は、不機嫌を露にする。


「国外の大発生は、見逃してもよいのですか」

「何の話だ」


 ハインリッヒは、興味を示す。


「ロベルト、報告」

「はい、隊長」


 ロベルトは、遠方で広範囲に、魔獣が大発生する可能性を知らせる。ついでに、副官室で、翻訳必須資料が止まっていた件も告げる。危険が発覚する迄に、かなりの時間が経っていることを、忘れずに話す。


「見過ごせんな。任せる」



 銀紐隊員5名の纏う空気が、急激に硬化する。


 騎士団には、エリート意識が強い団員も多くいる。そんな中、銀紐は、雑用や汚れ仕事でバカにされている。しかし、隊員15名は、揃って本来の使命に忠実だ。


 人類の危機に繋がるかも知れない情報を、会議にもかけず丸投げとは。ジルベルトは、我慢ならない。


「団長、副官室の総入替えを直訴します」

「貴様、反乱でも起こすつもりか」


 ジルベルトの怒りに、ハインリッヒは、不機嫌に返す。


「感情で人事は動かん」

「なっ」


 ヴィルヘルムが、思わず声を上げた。



「誰かが私欲で動かしている皺寄せが、来てるんですがね」


 ジルベルトは、冷静に続ける。


「騎士団の使命の前には、色恋など、二の次ですよね」


 団長は、急に毒気を抜かれた。


「どの口が言う」



 討伐中に運命の出会いを果たしたジルベルト・タンツ隊長は、薄紫の瞳をギラギラさせる。


「おっしゃる意味が解りかねます」


 目撃者ヴィルヘルム、フリードリヒ、ゲオルクの3人は、苦笑いしている。ロベルトは、状況に追い付けない。


「俺は、現場に何の迷惑もかけてませんが」


 堂々と言い放つジルベルト。


「まあ、そうだよな」


 諦めモードのヴィルヘルム。


「むしろ、多いに貢献しております」


 畳み掛ける銀鬼。


「確かにな」


 同意するフリードリヒ。


「あまつさえ、搾取されております」


 ここぞとばかりに訴えるタンツ銀紐隊長。


「事実だな」


 ゲオルクも、納得する。


「銀紐隊の待遇改善の為、城塞騎士団々長副官室人事、総入替えを、提案いたします」


 あくまでも声をあらげず、淡々と言いきった。


「情報遅延は、命に関わります」


 ジルベルト隊長は、ハインツ団長の眼をぐぐっと覗き込む。団長は、思わず後ずさる。


「ぜ、善処しよう」

「期待しております。失礼します」



 後日、アンナ騎士の息がかかったエリート騎士達は、厳しい適正テストを受けさせられた。副官室に限らず、炙り出された不満分子が、篩にかけられた。

 鍛練を怠らない者でも、不正を行っていれば、アウトだ。


 根こそぎ粛清出来たのは、プファルツ隊長率いる緑紐隊のお手柄である。勿論、ゲオルクの恋人シャルロッテ・ハイムも、暗躍した。

 ジルベルト達は、くれぐれもゲオルクと喧嘩しないようにしよう、と思った。



 そんなこんなで、騎士団は今日も忙しい。結局、ハインツ団長は、クララ・シュタインベルクと、まだ結婚できないのだった。

次回、国の外までお使いに

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