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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第一章・魔獣防衛都市ナーゲヤリの人々
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ロベルトの不安

今回も1話です

 ジルベルトは、早速隣の副隊長室に声をかける。壁越しに、2人分の返事があり、やがてヴィルヘルムとフリードリヒが、やって来た。


「なんすか」

「おう、ロベルト。ヤバイ案件でも見つけたか」


 ロベルトは普段、国外の魔獣関連のニュースにも目を通している。新種の魔獣が発見されたり、何処かで魔獣が大量発生したりすると、隊長室まで報告に来る。


「ヤバイっちゃ、ヤバイすね」

「お前ら、ゲオルクから何か聞いてるか」

「もしかして、今話題の、団長浮気事件?」

「シャルロッテちゃん監修の、厳選情報ありそうっすね」



 ゲオルクの恋人シャルロッテは、情報分析が専門である。人の良いゲオルクが、あちこちから仕入れて来る雑談から、有用な情報を洗い出す。


 必要に応じて、ゲオルクの銀紐隊とシャルロッテの緑紐隊に報告をあげているようだ。2人が交際を始めた事は、騎士団全体の利益となった。


「別れんなよ」


 などと、無神経な事を言ってくる緑紐隊長フランツ・プファルツに、シャルロッテは苛立っているのだが。



「ゲオルク呼ぶか」

「俺、探して来ます」


 ロベルトが、隊長室を出ていく。


「騎士団中枢部の連中、暇っすね」

「仕事回しちゃいましょうよ」


 略奪愛の支援なんかで、中央議会の印象操作までしているとは、余程暇なのだろう。どうせ、その相談で後回しにされた仕事は、仕分けされることなく、銀紐に振られてくるのだ。


 加えて、緊急案件が押し付けられる。魔獣の大増殖や、大量侵入などは、直接団長に報告が上がる。そして、団長は、当然のように銀紐へと回してくる。



「あいつら、現場じゃ役にたたん」


 ジルベルトが苦々しく言うと、今呼ばれて来たゲオルクが、


「騎士の癖に、走り込みすらやってねぇんだと」


 と、新情報をもたらす。


「まじかー」

「大討伐で副官どもが留守番してたの、そう言うわけ?」


 副隊長2人が呆れる。


「留守番組で、まともに仕事してた偉いさん、副団長と副団長補佐だけだな」

「うわ、留守中の勤務態度まで筒抜け、怖ぇー」


 ゲオルクの事情通に磨きがかかっている。ロベルトは(おのの)く。



「しかしよ、隊長」


 ヴィルヘルムが、首を掻きながら言いにくそうに口を開く。


「いっそ、副官リコールの直訴でもしますかね」

「中枢部と全面戦争すんのか?」


 フリードリヒは、穏健派だ。


「職務怠慢と、銀紐の繁忙が関連付けられないとな」


 ジルベルトは、ギロリとゲオルクを見る。


「職務怠慢なら証明できるみたいすけど」

「流石、シャルロッテちゃん」

「プファルツ隊長も動いてるみたいで」

「でも、こっちとの関連性の証明はなぁ」

「あの」



 黙って聞いていたロベルト・ヘンデルが、緊張した面持ちで口を挟む。


「翻訳資料に、キナ臭い話が混じってまして」

「なんだ」

「遠方の山岳地帯でも、大発生の兆しがあるみてぇなんす」


 皆が息を飲む。


「共同討伐の比じゃねぇ広範囲らしくて」


 ジルベルトが、無言で頷く。


「その資料、日付が大分前なんすよね」


 ジルベルトが、銀鬼(シルバーデビル)の面目躍如と言った顔つきになる。


「副官室管轄の資料っすよ」


 ヘンデルが、駄目押しをする。


「でかした、ロベルト。直談判にいくぞ」

次回、城塞騎士団の使命

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