表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第一章・魔獣防衛都市ナーゲヤリの人々
33/110

とばっちりは回避したい

今回は1話です

 銀紐隊員ロベルト・ヘンデルは、華麗なる短槍使いである。槍なのに短いとは何事か、等と言ってはいけない。短いと言っても身の丈以上はあるのだし、取り回しの身軽さは、技術の高さを示している。


 先の共同討伐などの、山中での乱戦では、変幻自在の活躍をした。突進する鉄爪猪(テッソーチョ)に、身を低くして滑り込み、急所を突く。牙を立てんと狙う毒牙兎(ドクガト)を払う。


 速さに任せた尾羽の動きで、周囲を凍らせる氷尾長(コオリオナガ)を、地面に叩きつける。刃の角を振るう刃角鹿(ハカクカ)は、脚を掬って引き倒す。



 だが、そんなのは、たいして重要ではない。何故なら彼は、『雑用部隊』銀紐隊の隊員だからである。


 銀紐隊の例に漏れず、彼にも立派な特技があった。人呼んで多言語マスター。

 魔獣対策の国際会議が、彼の仕事場なのだ。最前線の現場に居ないと、この役は務まらない。まさしく、天職。



 さて彼は、世界魔獣討伐会議定例会への、参加要請を受けていた。いつものように、資料翻訳と通訳を担当することになったのだ。

 200年ぶりの大討伐を終えた、城塞都市国家ナーゲヤリと交易都市国家モーカルが、今回のメインパネラーである。普段より、彼の仕事は多い。


 新しい辞書の購入申請も通り、準備は順調に進んでいた。メインメンバーとの打ち合わせは、通常より頻繁に行っている。


 団長はその度に、同じ女騎士を補佐官に連れている。今までには無かった事だ。

 当然噂になっている。打ち合わせに出席している、中央議会の議員は、噂を真実だと思っているような態度を取る。

 婚約者しか眼中にないハインツ団長は、すこぶる不機嫌だ。



「隊長、ちょっと、いいすか」


 ロベルトは、銀紐隊長室に来た。そこで勤勉に仕事をしている、残忍な眼をした大男に声をかける。彼は、部屋の主、ジルベルト・タンツ隊長その人である。


「何かあったか」


 ジルベルトは、その風貌に似合わぬ気遣いを見せる。


「いやあ、ハインツ騎士団長のことなんすけど」

「ああ」



 ジルベルトが、地獄の底から響くような音を出す。最早、声とも言えないような、怨念の籠った響きである。


「ご存知でしたか。流石っすね」

「いや、団長の機嫌が悪すぎてな」

「理由、ご存知で?」

「ゲオルクに聞いた」



 ゲオルク・カントは、事情通である。本人は意図していないので、質が悪いと言えなくもない。

 まして、最近上手くいった恋人は、情報分析が専門の緑紐隊員だ。基本性格からして、人より色々と真実に近づくのである。



「どうします?」

「これ以上、団長の雑用を押し付けられたくないしな」


 団長が荒れると、銀紐に皺寄せがくる。クララ・シュタインベルクを守る以外に、関心が無い男だ。そこに専念するため、何かあれば、振れる限りの仕事は銀紐に振る。


「はあー、めんどくさいなあ」

「とばっちり喰らう前に、潰すか」

「そっすねー」

※短槍の長さは、国や流派によってまちまちのようです。


次回、ロベルトの不安


よろしくお願いします



下書き1話ぶんが、毎回3~4話に増えてしまい、目次が見にくくなりました。前回から、章分けすることにしました。

章分けが解りにくい、見辛い、等のご意見がございましたら、教えて下されば幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〈i500805|29410〉 script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ