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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第一章・魔獣防衛都市ナーゲヤリの人々
32/110

ハインツ団長の行動原理

今回は1話です

 ナーゲヤリ城塞騎士団長ハインリッヒ・ハインツは、心が狭い。周囲も薄々気づいてはいた。だが、一見、決断力があり気配りも出来る、よいリーダーであり続けていたのである。


 ハインツ団長には、長年の婚約者がいた。しかし、いざ結婚となる時に、決まって大きな討伐が組まれてしまう。


 団長は、ギリギリまで粘って出撃回避を試みる。だが、毎回、願い虚しく、討伐は実行されてしまう。

 帰還すれば、暫くは後始末もある。



 そもそもハインリッヒにとっては、婚約者以外、どうでもよかった。

 婚約者クララ・シュタインベルクを守る事が、唯一の行動原理だ。勤勉で面倒見が良いのは、総てクララを守る力を育てているに過ぎない。


 そんな団長の鼻先で、さっさと結婚してしまったジルベルトを、ハインリッヒは、苦々しく思っていた。



 そこを、勘違いした女性がいた。

 仲睦まじいタンツ夫妻を見て、団長が不機嫌になるのは、婚約者と上手く行っていないからだと考えたのだ。


「団長、お可哀想に。なかなか婚約解消出来ないのね」


 女騎士アンナは、夕食の席で同僚に話す。


「えっ、そうなの」

「そう言えば、婚約してから長いよな」


 噂はたちまち広がった。



 ハインリッヒ・ハインツ団長は、むしろ、早く結婚したいのである。

 度重なる結婚延期にも関わらず、静かに待っていてくれる。クララは得難い女性なのだ。


「団長~、なんか変なことになってますけど?」


 情報部隊である緑紐隊の隊長、フランツ・プファルツが、心配そうに顔を出す。


「何の事だ」

「最近、会議のお供、いつもアンナ騎士でしょ」

「そのようだな」

「まずくねぇですか?」

「何がだ。補佐のローテーションは、副官どもに言え」


 団長は、興味無さそうだ。



「ずいぶんアンナ騎士が、かいがいしいって噂んなってます」

「仕事出来なきゃ、副官の意味がない」

「そうじゃなくて」


 団長は、意に介さない。煩そうに、書類を繰り始めた。


「用がないなら帰れ」

「噂を何とかしないと、本当に婚約破棄されちゃいますよ」

「何?下らん」


 ハインツ団長にとっては、どうでも良いことだ。クララが離れて行くなんて、あり得ないと思っている。



「副官室の連中が、一丸となって動いてますぜ」

「好きにさせておけ」

「あいつら、中央議会の偉いさん達も抱き込んでます」

「は?」

「クララさんのご両親のお耳に、そろそろ届きそうですぜ」


 さすが、緑紐の隊長。情報の動きは、常に最先端を掴んでいるようだ。

 ハインツ団長は、不機嫌に唸る。

 これまで築いてきた信頼関係も、悪意を持って突かれたら、案外脆く崩れてしまう。


 クララは、大丈夫だ。だが、その両親は?

 例え噂は嘘だったとしても、娘の不名誉な評判を放置した男を、許すだろうか?


 団長は、手を止めて、対策を練る。

次回、とばっちりは回避したい


よろしくお願いします

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