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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第一章・魔獣防衛都市ナーゲヤリの人々
30/110

魔獣のめざめ

今回は1話です


 取り敢えず、子犬のゴワちゃんが走って行ったと言う方向へ向かう。石畳の街路には、掃除をする住人達がちらほら残っている。鞄を抱えて出勤中の人々も、忙しそうに通って行く。


「すみません」


 掃除の人に、声をかける。


「はい、なんでしょう」


 青白縞のエプロンを掛けた、人の良さそうなおじさんが、手を止めて話を聞いてくれた。


「うーん、その時間は、外を見てないからなあ」

「なにか普段と変わったことは、ありませんでしたか?」

「何でもいいんです」


 ジンニーナの質問に、ゴワちゃんのおばさんも付け加える。


「そうねえ」



 そこへ、朝市帰りの食堂の主人が通りかかった。

 朝市は、南広場で毎朝開催されている。南広場は、南にあるナーゲヤリの出口付近だ。


「おう、オヤジ、犬みなかった?」


 お掃除おじさんは、気さくだが、かなり大雑把な性格のようだ。


「犬ぅ?迷子か?どんな」


 おばさんの不安そうな様子で、食堂の主人は、迷子犬探しだと察する。


「どんなだっけ」


 おじさんが、ジンニーナとおばさんの方を向く。


「茶色くて、ゴワゴワの短い毛です。体は縞模様の」

「そうだなあ」

「今朝、この道をあちらへ逃げちゃったみたいです」

「うーん、あっ、そう言えば」



 食堂のオヤジさんが、何かを思い出した。聞いていた3人は、一斉に身を乗り出す。


「いや、でもなあ」

「何でも、いいんです」

「気になったことを」


 オヤジさんが言い淀むと、女性2人が畳み掛けるように、先を促す。


「犬って言うか、瓜坊がよう」


 おばさんは、あからさまにガッカリする。ジンニーナは、それだ、と思う。



「何だか、眼を血走らせて、走ってたな」

「何処で見ましたか?」

「ありゃあ、南広場の近くだったかな」

「いつ頃です?」

「ちょうど朝市が始まった頃だね」


 おばさんは、ジンニーナの様子に不満そうだ。ゴワちゃんが、瓜坊に見える事は、解っているのだろう。そして、それを嫌がっているのだ。


 普段は、気を使って、それを指摘しないジンニーナである。だが、今は、情報を得る方が先決だ。



「けどよう、おばちゃん、ありゃちっとやべぇよ」

「何が」


 ゴワちゃんの飼い主が、気色ばむ。


「な、何って。眼が紫だったぜ」

「はっ?」


 飼い主さんは、お怒りである。今にも立ち去りそうだ。

 だが、ジンニーナは、この目撃談の瓜坊が、ゴワちゃんだと確信した。


「出来れば、正確な目撃場所を、教えて下さい」


 赤毛の魔女が、声色を変える。愛らしい猫目が、キリリと吊り上がる。完全に、お仕事モードになった。

次回、ゴワちゃんママの涙


よろしくお願いします

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