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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
序章・魔法使いの結婚
3/110

鉄壁の魔女ジンニーナ

ヒロイン登場。

今回も、2話投稿です。R2/9/4 22:00,9/5 0:00

 山の反対側は、海の道と平原の道、そして通常時なら山の道と言う3つの街道が交わる交易都市国家モーカルだ。



 モーカル側から斜面を軽やかに駆け登る、1人の大女がいる。モスグリーンの質素なワンピースは、足首が見えるロング丈。茶色い革のショートブーツで、滑るように悪路を走って行く。


「今いきます!」

「ありがとう」


 彼女は、燃えるような赤毛を振り立て、交易都市国家側の討伐隊員を、右へ左へ訪ねて回る。魔獣の巨大な牙に(おのの)くモーカル魔法守備隊を守っているのだ。


「そっち次いくので!」

「まだ大丈夫そうです」


 突進する魔獣から突き出す鋼鉄の棘を危なげなく(かわ)し、縦横無尽に魔法のベールを投げ掛ける。


「おまたせしました!」

「おおー、助かったぜ」


 大女の名前は『鉄壁の魔女』ジンニーナ・ロッソ。緑の猫目が愛らしい。あらゆる守りの魔法を使う、流しの魔法使いである。


「今度、メシ奢りますよ」

「あはは、気持ちだけ頂きます!」


 たまたまモーカルを訪ねて来たところで、未曾有の魔獣発生に遭遇してしまったのだ。



「わあっ、やっべ、ジンニーナさんの壁すげぇ」

「ほんとですよね、壁無かったら、今死んだー」

「ふふっ、過信は駄目ですよ!」


 彼女は、『鉄壁』の2つ名を持つ有名人である。モーカルは、ジンニーナを、交易都市国家の魔法使いとして認可した。同時に、魔獣討伐隊への参加を打診したのであった。



 山の道は、城塞都市側には抜けられない。豊かな森の都市国家コカゲーと、このモーカルを結ぶ山越えの交易路である。


 コカゲーは、森の加護で魔獣被害が無い。交易も、メインは森向こうにある別の国々と行っている。その為、山の道が魔獣発生で短期間閉鎖された所で、大した損害を出さずに済む。だから、討伐隊への参加は昔も今もしないのだ。


 討伐隊の人手不足は、そんなことにも起因している。それでも、モーカルでは、国が認可しない限り、魔獣討伐には参加出来ない決まりがあった。


 生半可な魔法技術で防衛に参加すれば、国民に死傷者が出る。安全を考慮して、モーカルのルールが変更されることは無かった。



 モーカル中央市場の賑わいは、毎日が祭りのようだ。カラフルな屋根の屋台には、買い物客が引きも切らず。学校帰りの若者達が、珍しい小物を売る露店商に足を止める。


 外国の大商会が店を構える中心街は、着飾った貴人や裕福な観光客で溢れかえっている。歪みの無い石畳を、柔らかな高級皮革や、刺繍も美しいサテンの靴が、途切れることなく通り過ぎて行く。


 大通りから小路まで、様々な物売り達が、呼び声も朗らかに屋台を引いて歩く。


 片手に持ったベルをカランカランと振りながら、炒り豆を売る男がいる。素敵なソプラノを響かせる娘は、魚介類を売り歩く。


 スパイス売りの引く荷車屋台には、唐辛子やにんにくを紐で結んだ束が下げられて、愉快に揺れている。呼び声にも屋台にも、みな各々の工夫を見せる。


 こんな平和な風景を守る為、此方の街には、『魔法守備隊』と呼ばれる集団がいた。彼等は、魔獣が街に入らないように日々働いている。ナーゲヤリ城塞騎士団のようなエリートだ。


 ナーゲヤリと違うのは、ここモーカルでは、守備隊を含む『認可魔法使い』以外の討伐・防衛行為が、禁じられている点だ。


 その代わり、ふらりと街を訪れたジンニーナ・ロッソのような旅人であっても、『認可』を与えられれば、魔獣討伐に参戦出来るのであった。

次回、ラブコメの予兆あり

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