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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第一章・魔獣防衛都市ナーゲヤリの人々
29/110

子犬は何処へ行ったのか

今回は2話


R2/9/14 23:00,9/15 0:00

 家の近くまで戻ってくると、犬のおばさんが駆け寄ってきた。かなり慌てている。


「ジンニーナさん、うちのゴワちゃん見なかった?」

「えっ、何かあったんですか?」


 ゴワちゃんとは、瓜坊みたいな子犬の事である。


「それがさ、急に綱を振り切って逃げちゃったのよう」

「何かに驚いたんでしょうか」


 ゴワちゃんは、大人しい犬だった。


「分かんないのよねえ」

「逃げたのは、どの辺ですか?」


 逃げた辺りを調べれば、逃げた原因が解るかも知れない。


「中央公園の前辺りなの」

「公園に入っちゃったんですか?」



 中央公園は、最近漸く瓦礫撤去作業が終わった。今は、地均しをしているようだ。相変わらずナーゲヤリ環境局造園技術課だけで行っている。


 近隣住民からは、騒音への苦情が出始めた。何故、魔法で手早く終わらせないのか、と、血気盛んな城塞都市国家国民が抗議を始めたのだ。


 作業現場に文句を言いに行く住民の姿は、早くも風物詩になりかけている。環境局の建物へ直接怒鳴り込む者も、後を絶たない。そのうち、公園復興作業員への販売拒否運動でも実行されそうだ。



「そうじゃないんだけど」


 早朝には、まだ作業が始まっていない筈だ。ゴワちゃんが、騒音に驚いて走ったとは、考えにくい。


「凄いスピードで走って行っちゃって」


 おばさんは、困り果てている。


「一旦、家に戻りたいので、1時間後に中央公園正面入口でお会いしましょう」

「あら、探してくれるの?ありがとう」


 一緒に探してくれる人がいるだけでも、心が大分楽になるものだ。おばさんは、少しだけ明るい顔になって、ゴワちゃんを呼びながら立ち去った。



 ジルベルトの出勤を見送ってから、ジンニーナは中央公園へと急ぐ。工事の騒音は、もう始まっている。まだ、ナーゲヤリに住む人々の、平均的出勤時間だ。


 工事を早く終わらせたいのだろうが、騒音を出すには、些か早すぎる時間帯のように思われる。暇なご隠居は、既に文句を言いに出てきているようだ。



 ゴワちゃんの飼い主さんが、公園入口で立っているのが見える。抗議おじさんと話しているようだ。おばさんは、怒鳴り混むタイプには見えない。ゴワちゃんの事を聞いているのだろうか。


「お待たせしました」

「いえ、そんな。ありがとうございます」


 おばさんと、軽く挨拶を交わす。


「それで、どちらの方向へ走って行ったんですか」

「むこうです」


 おばさんが示す方向を眺める。ジンニーナも、今朝歩いた道だ。似たような時間帯に通った筈だが、特に変わった様子は無かったように思う。

次回、魔獣のめざめ

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