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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第一章・魔獣防衛都市ナーゲヤリの人々
27/110

赤い鎖は縁結び

R15 血糊少なめ やや閲覧注意


今回は、2話

R2/9/13 23:00,R2/9/14 0:00

 銀紐隊と、緑紐隊の敷地は離れている。ちょうどそれぞれの隊に向かう、分かれ道に差し掛かる時、鋭い風切り音がした。冷気が髪を吹き抜ける。


 ゲオルクは、無言でシャルロッテを庇う。抱き込む形で、路の脇に寄せた。


 腕のなかで、細身の緑紐隊員が息を呑むのが解った。心なしか、顔が赤い。


(気を散らすな)


 ゲオルクは、自分に言い聞かせて、


「済まない、氷尾長だ」


 と、断りを入れ、素早く身を離す。


「あっ」


 シャルロッテは、名残惜しそうに呟く。だが、既に鞘を払って臨戦態勢のゲオルクには、届かなかった。



 ゲオルクの切っ先が届くより速く、両端に重りが付いた銀の鎖が、細身の鳥に巻き付いた。


「見るなっ」


 ゲオルクは、再びシャルロッテを抱き込む。

 シャルロッテは、またもや息を呑む。



「おう、ゲオルク」

「あら、お邪魔しちゃ駄目よ」


 氷尾長は、拘束鎖分銅バインドにより、身動きが取れず落下する。小さな体には、鎖に(さいな)まれて血が滲む。


 それでも魔獣は、闘気を失わない。落ちながら、その毒々しい尾羽をばたつかせ、辺りに霜を振り撒く。


 しかし、地に着く前に、哀れ氷尾長は、銀鬼ジルベルト・タンツのメルトで焼かれた。



 ゲオルクが、突然気づいた。腕の中のシャルロッテは、鼓動が早鐘のように打っている。ゲオルクは、シャルロッテを解放すると、痛ましそうに、こう言った。


「見ちまったか。まあ、気にするな。つっても、無理かも知れねぇがな。あの夫婦は、あんなもんだ」

「あ、いえ」


 鼓動の速さは、恐怖からではない。伝えたいが、伝えられないシャルロッテ。ゲオルクの行動には、本当に他意がなかった。それが解っているので、シャルロッテは、どうしてよいか解らなかった。



 ゲオルクは、ついでに熱嘴鷹(ネッシヨウ)を、袋ごと焼いて貰う。市街地なので、二羽の魔獣を焼いた灰は、専用の袋に詰めて、ゲオルクが銀紐隊の敷地で埋める事になる。


「それじゃ、仲良くね」


 ジンニーナが声をかけ、ジルベルト達夫婦は、結局駆り出された『お使い』の報告をしに、城塞騎士団本部に向かう。ジンニーナは、ジルベルトと共に居るだけで幸せそうだ。ジルベルトは、照れ臭そうに新妻の手を握っている。


 2人は、新婚夫婦の仲睦まじい背中を見送る。お互いの様子は見ていなかったので、2人とも、相手の切なく羨ましそうな表情は、全く知らないままだった。



「ハイム、大丈夫か」

「お気遣い、ありがとうございます」


 シャルロッテは、優しくされて嬉しそうだ。


(チャンスじゃないの。勇気、出さなきゃ)


「あ、あの、報告したら、その、ご飯、とか」


 やや挙動不審ではあるが、なんとか言いきった。顔が真っ赤で、もじもじしている。これは、もう、ゲオルクにも明白だった。



 ゲオルクは、驚いてシャルロッテを凝視する。


「ご迷惑、でしたか。すみません」


 緑紐の女騎士は、しゅんとする。


「そんな事ないっ。俺から言わずに、悪かった」

「えっ、じゃ、あ」


 ゲオルクが、無言でシャルロッテの手を握る。はにかむシャルロッテ。


「あの、ロッティって、呼んでくれる?」


 感激のゲオルク。


「ああ、緑紐まで迎えに行くぜ。あとでな、ロッティ」

次回、朝のお散歩


よろしくお願い致します

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