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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第一章・魔獣防衛都市ナーゲヤリの人々
22/110

山中の血戦

R15 血糊少なめ 閲覧注意


今回は、2話です。

R2/9/11 23:00, 9/12 0:00

 山の中で、立ち往生している中年男が居た。どうやら、肉や山菜を採りすぎて、上手く進めなくなったようだ。


「おーい、何やってんだ、おっさん」

「荷物減らせよ」

「騎士さん、ちょうどよかった!」

「持たねぇぞ」


 聞けば、彼は最近婿入りした居酒屋付きの宿屋で、仕入れを任されたのだと言う。言い付け通りの量を採ったら、動けなくなったらしかった。


「親爺さん、ここは危険です」


 ジルベルトが、丁寧に説明した。


光線眼熊(コウセンガンユウ)が出たんですよ」

「そんなあ、じゃ、騎士さん、麓まで手伝って下さいよ」

「持たねぇからな」


 フリードリヒ・ブレンターノは、釘を刺した。



 ざくざくと重たい音がして、振り向けば、熊が居た。普通の熊より一回り大きいが、目立った特徴はなかった。


 熊の眼が、微かに光った。


 その時であった。若き日のジルベルト・タンツは、咄嗟に投げた拘束鎖分銅バインドで、魔獣である熊の光線眼を潰し、首を閉めたのである。


「ひいっ」


 光線眼熊(コウセンガンユウ)は、目線に横一文字の血を流して、首を閉める銀色の鎖から千条(ちすじ)の赤を滴らす。その光景に、宿屋の婿は、腰を抜かした。



 タンツの騎士靴が、足元の枯れ葉を蹴る。と、思う間もなく、溶解魔剣メルトの燃える刃が、魔獣の首を落としていた。手元には、鎖分銅バインドが戻った。


 倒れかかる光線眼熊(コウセンガンユウ)を、風裂魔剣カットが襲った。


「おぉ」

「えげつねぇ」

「おっさん、大丈夫か」


 ゲオルクが、宿屋の男に手を貸して引き起こしたとき、


「ゲオルク、走れっ」


 叫んだ若きジルベルトは、双剣を手に、光線眼熊(コウセンガンユウ)の残骸を飛び越えた。


 その気迫に、俊足ゲオルクは咄嗟に男を担ぎ上げて、山道を駆け(くだ)った。毒矢遣いフリードリヒが、弓を手にジルベルトを追う。ヴィルヘルムも、戸惑いながら後に続いた。



 周囲には、普通の熊どころか、鹿や卯すら見えない。小鳥の声が止んでいた。ジルベルトは、巨体を感じさせること無く、しなやかに木々を縫う。従う2人も、軽やかに落ち葉を蹴立てて、斜面を降りて行った。


 ジルベルトの殺気が消えた。続く2人も気配を消した。


 前を走るジルベルトが、手を軽く上げて合図を送った。ジルベルト、ヴィルヘルム、フリードリヒの3人は、速度を落として木の幹に隠れた。


 山のこの場所には、3人とも初めて来た。目の前に、巨大な岩穴があった。獣よりも濃い、魔獣の臭いがした。

 新人2人が息を飲んだ。



 ジルベルトは、その酷薄な薄紫の瞳で、大穴を睨んでいた。やがて、のそりと大熊が姿を現した。


 続いて、同じくらいの大熊が、数頭出て来た。みな、ただの熊ではない。


 ジルベルトは、長剣を振って熱風を送った。熊の先頭集団が、眼を潰されて怒り狂った。閉じた瞼から血の涙を流して、光線眼熊(コウセンガンユウ)どもが、一斉に立ち上がった。


「眼を潰せっ来るぞ!」


 ジルベルトが怒鳴った。大木の幹がビリビリと震えた。

次回、熊はご馳走


よろしくお願い致します


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