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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第一章・魔獣防衛都市ナーゲヤリの人々
16/110

中央広場で逢い引きを

今回は2話

R2/9/8 11:00,12:00

 ゲオルク・カントは、剛剣遣いである。丸太を重ねたような、頑健な体格から繰り出される斬撃は、重く鋭い。


 ジルベルト隊長の舞うような剣技に対し、ゲオルクの剣は、豪勇無双な力の剣。さて、これ程の遣い手が、何故、武器特化の赤紐隊に配属されなかったのか。



 彼は、とんでもない俊足だったのである。体術特化の紫紐隊でも、彼と比べれば芋虫のごとき鈍足と言えよう。


 ゲオルクは、俊足を活かしたヒット・アンド・アウェイで手数を稼ぐことも、実は出来る。走り回って撹乱する戦法もとれる。スピードを操り、フェイントをかけることも得意だ。



 だが、彼は、彼の剛剣を愛す。一息に距離を詰め、一刀両断である。彼は、一直線で豪快な男なのだ。


 それは、情報収集についても同じだった。彼は、気持ちの良い男であったから、街の人々の口もつい、軽くなる。搦め手を嫌う性格がなければ、情報部隊の緑紐にスカウトされたかも知れない。



 実際、ゲオルクの実力を正確に把握し、何とかして手中に納めようと画策する、1人の緑紐隊員がいた。


 名を、シャルロッテ・ハイムという。緑紐の中堅女性騎士である。彼女は、情報分析が専門であり、武芸はあまり得意とは言えない。



 そんな彼女が、実習中に本物の暗殺者集団と出くわした。1人でも、彼女に取っては難敵だ。それが、集団で犯行に及ぶ現場を、偶然目撃してしまった。


 その時、救ったのが、ゲオルクだった。その時の彼は、ガラクタで歩きにくい裏道を、縦横無尽に駆け巡り、あっという間に暗殺集団を捕縛してしまった。


 詰める、峰打ち、捕縛の単純な繰り返しだった。それが、ゲオルクの俊足によって、変則技ばかり繰り出す暗殺者達を無効化したのである。



 今、彼女は、ゲオルクと共に中央広場に居た。巡回当番である。横の繋がりを強化するため、市中巡回は、隊を跨いで組まされる。


 相手はランダムに決まるのだが、シャルロットは、気付かれない頻度で、ゲオルクと当たるように仕組んでいた。



「きゃっ?」


 ゲオルクが、素早くシャルロットの両手を掴む。


 その表情は固い。手はそのままシャルロットの耳に当てられる。ゲオルクも、自分の手で耳を塞ぎ、


「逃げろ!音波雀(オンパジャク)だ!」


 と叫んで駆け出した。


 中央広場にいた人々も、耳を塞いで鼓膜を守ると、てんでに逃げ出す。シャルロットも、ゲオルクの後に従う。


 剛剣使いの大きな背中を追いながら、緑紐隊員シャルロット・ハイムは、なんて機転が利く男なのだろう、とときめいていた。

次回、血霧降る広場にて


よろしくお願い致します

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