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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
最終章・未知の領域
108/110

魔法使いと魔剣遣いの夫婦はなんでも屋に転職する (前)

最終回は前後2分割で連続投稿です。

r3/2/21 22:00,23:00



 ジルベルト・タンツを筆頭に、ナーゲヤリ城塞騎士団銀紐隊総勢15名。1人も欠けること無く元気一杯で死の平原に建つ砦に到着した。

 入る前に、ジルベルトの世界一と謳われる『魔力感知(まりょくかんち)』で砦内部の安全性を再確認する。念には念を入れるのが命を長らえる秘訣なのだ。


「こんちは」


 ロベルトに習ったスパイス商人が使う言葉で、ジルベルト達が挨拶をする。物見当番の1人を覗いた6人の駐在員が出迎える。


「良くおいでなすった!」


 そう、砦の駐在員はたったの7名だった。7名の中には2名の女性もいた。2人とも弓の名手だが、1人はむしろ作る方が専門なのだという。この情報に食い付いた銀紐隊技術者達の興奮を叱り付け、ジルベルトは代表者に挨拶をする。

 通訳は、当然ロベルトだ。


 互いの本国については、既にロベルトを通じて情報交換が終わっている。砦の人々は、魔法使いの全く居ない国に住んでいるのだと聞く。死の平原を越え、砦より向こう側の国々には、魔法使いは珍しいのだとか。


 最も、魔法使いの集団が生活しているナーゲヤリ、モーカル、コカゲーの都市国家郡でも、魔力を持つ者自体が人口比率から言えばかなり割合が低い。



 現在の魔獣発生状況も簡単に知識を摺合せ済みだ。これから、砦の人々もジルベルト達も本国との連絡を踏まえて、互いの装備などを見せ合う予定だ。


「ほほう。こいつが噴霧器ですかい」

「この弓の素材は、なんとも素晴らしい」


 折角ジルベルトと砦の代表者が紳士的に挨拶を交わしたのに、技術者連中は互いに眼をギラつかせながら、あっという間に技術交流を始めてしまった。ロベルトも大忙しである。


「それで、これなんでごぜえすが」


 フリードリヒが、川の水採取でどす黒く変色していた紐を見せる。


「ああ、こいつぁ凄ぇ」

「防腐剤、何で出来てんですかい」


 フリードリヒが、紐の保護に使った薬剤について軽く成分を説明する。ある素材を口にした途端、砦の薬品担当者が大きく頷く。


「それでさあ」


 どうやら、紐がどす黒く変色していたのは、浄化作用と腐蝕防止材の原料に使用していた魔獣の素材が拮抗した為だったらしい。


「あの川の浄化作用と()()なんざ、大した防腐剤でござんすねえ」



「隊長さん、疲れとりの薬湯でもどうだい?」


 弓使いの女性2人が、甘い声を出してジルベルトに近づく。

 途端に、何かに阻まれて前へ進めなくなった。


「ジン?」


 一瞬後には弓使いの女性達の前に、赤毛に焦げ茶色の丸目玉をした大女が立ち塞がっていた。


「悪いけど、私の夫だから」

「ジン!」


 ジルベルトは愛妻の行動に感激して抱き付く。


「えー」

「あーあ」

「うん」


 フリードリヒ、ヴィルヘルム、ゲオルクの三人組は、鉄壁の魔女が突然現れた事に驚く様子もない。もう、この2人なら何でもありだと諦めて久しい。



「魔力循環の流れにのって転移したの。やってみたら出来た」

「流石ジン!凄いな」


 ジルベルトは、人目も憚らずチュッチュッと妻を可愛がる。妻は夫の愛に応えながらも、真剣な顔で宣言する。


「私達を会えなくする増殖は悪よ」


 勇敢にも通訳したロベルトを含め、銀紐隊14人と砦の6人は暫し沈黙した。物見の1人は気付いていない。ある意味幸運な男である。


23:00に後半を予約投稿しています。

最終部分もよろしくお願い致します。

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