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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
最終章・未知の領域
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 ジルベルト達銀紐隊の15人は水空籠に分乗して、浄化作用がある水の流れる川を渡る。川向こうの平原を遠く見渡せば、人がいるらしき砦が見えているのだ。


 恐らくは2日も歩けばたどり着ける筈。いつ果てるとも知れない死の平原を、踏破せよとの命令に従って黙々と歩んでいた彼らにとっては、明確な目標が出来ただけでもありがたい。


 通信技士ジークフリート・エルンストと多言語マスターであるロベルト・ヘンデルは二人組で砦とこまめに通信を行う。

 受信は情報部隊である緑紐隊シャルロット・ハイム。銀紐隊の剛剣遣いゲオルク・カントの恋人である。厳密に言えば、技術官が受信し、内容をシャルロットが分析する。結果はハインリッヒ・ハインツ団長に報告だ。


 記録係のルードヴィッヒ・シュヴァンシュタインは、2人組が砦と行う通信の横に張り付いて、あっという間に報告書を纏める。その日最後の通信が終了次第、ナーゲヤリ城塞騎士団へと送信するのだ。



 砦からの情報によると、浄化作用がある水の流れる川から砦までの平原には、魔獣が滅多に出ないと言う。それでも、川を越えたナーゲヤリ側には恐ろしいほど沢山の魔獣がいる。川の上でも、魔獣が争う。


 陸の魔獣は川を越えられないが、空の魔獣だけは防げないと言う。そこで、砦の人々は主に弓矢を装備して飛ぶ魔獣を迎え撃つ。なんと、彼らには魔法が無かった。魔法使いが1人もいないのだ。


 確かに、世界中で魔法を使える人間は僅しかいない。銀紐隊に居ると、規格外の魔法使いやら、魔力は少ないが自在に操る魔剣遣いやら、使える魔法は微力ながらもあらゆる魔法が使える者やらが日常的に居て、感覚が狂う。


 確かに、毒は中和剤でなんとかなるし、死体は炎で焼けばよい。らだが、魔獣の中には普通の武器では倒せないものもいる。

 そんな種類の魔獣には、防壁の道具を使ってひたすら耐えるしかない。


 今まではそれで何とかなってきた。しかし、昨今の大増殖には対応しきれていないのだ。


 砦はそろそろ限界だった。



「『死の平原』たぁ、良く言ったもんですなぁ」


 通信機の向こう側から、スパイス商人の使う訛りが強い言葉が届く。


「川向こうじゃ、随分魔獣がいやぁがるから、そっちに行こうなんざぁ思いつきゃしませんでした」


 これで一応丁寧語なのである。

 唯一その言葉を話せるロベルトが、納得した声をだす。


「ちげぇねぇこってす。こっちもまさか、死の平原を越えたら人がいるなんざ、思ってもねぇこってござんすよ」


 向こうの通信員とロベルトは、周囲の仲間たちには良く聞き取れない言葉ですっかり意気投合するのであった。

お読み下さりありがとうございました

次回もよろしくお願い致します

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