川の安全性を調べる
僅かな血液表現あり
苦手な方はご注意下さい
川に近づくと、ジルベルトは一旦隊を止める。清流に見える川ではあるが、何が起こるか解らない。川の周辺にいる魔獣は、今まで見た種類の他、ジルベルト達が初めて見る種類のものもいる。
魔獣は、互いに荒いい合う。普通の動物よりも頻繁に、互いに威嚇し、飛び掛かり、噛みつき合う。川の上では、森から飛んできた魔獣と平原にすむ飛ぶ魔獣が戦っている。
彼等の流す血は、川の水に跳ねとんで混じる。食いちぎられた肉片も、投げ捨てられて川に落ちて行く。
毒だけではなく、血や肉が頻繁に落下する川である。水が濁っていないのは、むしろ怪しい。
「フリッツ」
「行ってきます」
ジルベルト・タンツ隊長は、薬品マスターのフリードリヒ・ブレンターノ副隊長に水質サンプルの採取を指示する。
紐付きの矢に付けた採取容器が、放物線を描いて川面に刺さる。広がる波紋に不審な点はない。
突然の乱入者に、水上で暴れていた鳥の魔獣が色めき立つ。
手元のハンドルで巻き取る紐は、魔除けや毒除けの効果を持つ薬品と強化の魔法が施されている。余程の事がない限り朽ちたり焼けたりはしない。
「変色してるな」
ジルベルトが険しい表情になる。フリードリヒが手繰り寄せた紐は、どす黒く変色していたのだ。
採取容器を近くまで手繰り寄せてから、ジルベルトの溶解魔剣メルトで紐だけ焼く。
ジルベルトは、夫婦だけの魔法通信でジンニーナに助力を求める。
(ジン、採取容器の回りを守りの壁で囲んでくれ)
(解った。作業は出来るようにするけど、物体移動の魔法使える人がいる?)
(それぞれの威力は弱いけど全属性魔法使える奴がいる)
天才パイロット、ゲルハルト・コールの事である。
(いいね。作業は魔法なら壁の中でするのが安全よ)
(そうだな)
相談が終わると、ジルベルトはゲルハルトに指示を出す。
「ゲルト、フリッツの指示にしたがって魔法で容器の操作をしてくれ」
「緊張するなあ。ちょっと練習さして下さい」
「だな。隊長、空容器と普通の水でで練習してからにしますぜ」
「それが良さそうだな」
水は、ヴィルヘルムの水蒸気抽出装置とゲルハルトの水魔法によって、常に充分の供給を得ている。操作練習に使うくらいの少量の水は、彼等にとって大した事がなかった。
出発前は、常時遠隔で守りの壁を作るのは、ジルベルト1人分が限界と思われた。しかし、実際には全隊員を魔法の壁で囲っても、ジンニーナにはまだ余力がある。
銀紐隊15名全員を壁で囲った上で、実際の採取容器と練習用容器の回りをしっかりと防壁で囲んだ。
もしかしたら、3ヶ所の討伐隊全部に遠隔防壁を供給出来るかも知れない。
これはいよいよ、団長に知られてはならないな、とジルベルトは愛妻を気遣うのであった。
お読み下さりありがとうございました
次回もよろしくお願い致します
終章、下書きより増加しすぎたので、章分け変更しました。
下書きはあと1話。
ざっと読み返して説明不足や不自然な部分を修正していると、やはり2~3話に伸びそうです。
完結まで今少しお付き合い下さいませ。




