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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
最終章・未知の領域
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未知の領域

 ナーゲヤリ城塞騎士団銀紐隊が、無事毒沼を通過した。死の平原側の死骸は、ジルベルト隊長が溶解魔剣メルトで灰にし、風裂魔剣カットで毒沼に飛ばす。

 フリードリヒの中和剤でも、沼全体を解毒するのは難しい。沼の掃除は課題として報告に記された。



 さて、沼を越えてからしばらく淡々と殲滅前進して行くと、夕飯時になった。


「よし、今日はここでキャンプだ」


 ジルベルト・タンツ隊長が汗で額に張り付いた紫銀の髪をうっとうしそうにかき上げながら宣言した。


「もうちょい進めますよ?」


 ヴィルヘルム副隊長が、いつになく提言する。


「この先は未知の領域だからな」


 というジルベルト隊長の慎重な判断に、反対意見が相次ぐ。


「そうでもねえっす」

「しばらくは左手に森っす。魔獣も変わったのは出ねえすね」


 ジルベルトの弟分である3人組は、全員が前進派だ。他にも数名が夕飯後に少し進んでおく意見に賛成した。



 予定では、沼を越えたら野営地を探して休憩する、となっていた。だがジルベルトは、探す間も待たずに野営地を決めてしまった。


 昼食は、ちょうど毒沼の瘴気区域に入る頃だった。止まれる場所ではないため、移動しながらの栄養補充のみで強行した。

 ジルベルトとしては、なるべくきちんと食事休憩を取りたい。しかし、毒沼通過は初めから止まらない予定であった。

 それで、夕飯は落ち着いてしっかり摂らせることにしたのである。


「だめだ。今日はしっかり休むぞ」


 15人という大所帯では初めての、死の平原夜営だ。何が起こるか予測かつかない。ここでしっかりと慣れさせる意図もあった。


「へーい」

「仕方ねえな」

「俺、体力余って眠れねえかも」

「じっくり道具の手入れしとけよー」


 ジルベルトは、渋々従う部下たちをギロリと()めまわす。トレーニングを始めようとする者には、手入れを怠らないよう釘を刺す。


「修理素材刈ってきまーす」

「俺も狩ってこよー」


 フリードリヒとヴィルヘルムがするっと団体から離脱する。


「こら。副隊長が2人とも抜けるんじゃない」


 2人は銀髪の大男に、猫のように首根っこを掴まれる。そんな状態でも悪びれず、無言でじゃんけんをした。


「ちっ、俺残り」

「んじゃ、お先」


 勝ったフリードリヒが器用に拘束から抜け出す。ジルベルト・タンツは溜め息を吐きながらも、薬品の原料補充は仕方がないとして見逃す。



 漸く皆が大人しく夕飯を食べ始めた頃、ジルベルトはジンニーナと話していた。


(ジン、無理するな)

(大丈夫、設置型ならわざわざ維持しなくてもいいから)

(でも)

(時間も夜だけだし、ほんとに魔力少ししか使わないの)

(そうか?)

(心配してくれてありがとう)

(会いたいな)

(会いたい)


 夫婦は2人だけの魔法映像通信で、夜間に守りの壁を設置する相談をしていたのだ。しかし、なまじ顔が見えてしまうと余計に会いたくなってしまったようだ。


「隊長新婚さんだもんなあ」

「嫁さん置いてくる理性があって良かったよ」

「まあ、来てくれた方が俺ら助かったけどな」

「ばかっ、遠隔ですげえ助けてくれてるだろ」

「だな」

「ああ」


 ジルベルトの眉間に縦皺が刻まれ、隊員達は同情して顔を見合わせるのであった。

お読み下さりありがとうございます

次回もよろしくお願い致します

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