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第3話 宿屋の娘さんフラグはヤバいですか? 後編

 紹介してもらったのは『銀の(さじ)亭』という宿屋だった。お姉さんの話によると系列に『金の匙亭』と『銅の匙亭』もあり、金の匙亭は上流階級向けの宿で非常に高額、銅の匙亭は立地場所の治安状況は悪くはないが、宿屋内での揉め事が多々あるとの事。

 銀の匙亭でいいよね。安全安心はとても重要だ。お腹も空いてきて食事も取りたいが、銀の匙亭には食事処も有るとの事だから宿屋迄の我満だ。安全安心はとても重要だからね。


「こんにちは~」

 銀の匙亭の扉を潜る。

「いらっしゃい」

 中年のおかみさんが対応してくれた。1階は食堂になっていて、時間が食事時ではないため客は他に誰も見えなかった。

 俺はブレザーの内ポケットから金貨を1枚出した(金貨が大きくてサイフに入らなかった)。

「この金貨で何日ぐらい泊まれますか?」

「大金貨だね。3、4ヶ月は泊まれるよ。うちは1日1人部屋なら銀貨8枚。食事代や洗濯代は別料金。まぁ1日小金貨1枚としたら100日って事になるね。宿代は前料金になるけどどうする?」

「泊まります。とりあえず10日でお願いします」

「部屋は大部屋に、中部屋、小部屋とあるけど小部屋でいいかい?」

「小部屋って何れくらいの部屋ですか?」

「1人部屋でベッドが有るだけだよ」

「中部屋は?」

「ベッドが2台にテーブル、椅子が2脚って感じだね」

「中部屋はいくらですか?」

「小金貨1枚に銀貨5枚だけど、今の時期はお客もあまり来ないから小金貨1枚にしてあげるよ」

「では中部屋でお願いします。それから直ぐにでも食事をしたいんですけど」

「部屋に荷物を置いてきたら1階に降りてきな」

 2階の部屋に案内され、部屋に入ると十畳程度の広さにベッド2台とテーブルセット、カーテンを開けると通りを上から見下ろせる素敵な間取りだ。


 ベッドにダイビング~。

「フワフワだ~、モフモフだ~、ベッド最高~」

 2日間とはいえ馬車の硬い荷台や御者台で寝ていたこともあり、ベッド最高~な気分になってしまった。


 結局バッグは手に持ったままで、階下の食堂に降りていく。まだ宿屋の安心が、どの程度か分からないから不安な為だ。

 適当なテーブルに座ると、おかみさんが羊皮紙で作られた、年期の入ったメニュー表を持って来てくれた。

 一応見てみる。…読めません。

「じ、字が読めないんであれなんですけど、肉料理とスープと水を頼めますか?」

「はいよ~」

 おかみさんは厨房へ入って行った。


 しばらくして出て来たのは、羊の香菜焼きにポトフ的なスープとパンと水。全て美味しく頂きました。

 しかし、文字が分からないのは色々苦労しそうだな。食べ終わった皿を片付けに来たおかみさんさんに相談を持ちかける。

「おかみさん、数字を覚えたいんだけど教えてくれませんか?」

「あたしは人にものを教えるのは得意じゃないんだよね。娘を連れて来るからちょっと待ってな」

 と言って奥へと行ってしまう。

 宿屋の娘と聞いて妙な期待をしてしまう。宿屋の娘フラグなんて事は有るのだろうか?


 そういうば学校では1度も恋のフラグは立たなかったな。宿屋の娘さんを待つ間、学校でのフラグについて思いふけっていた。

「姫川さん…」

 ふと姫川彩月さんの事を考える。美人で頭も良くて、誰にも優しく、しっかりもののクラス委員長。俺のクラスは綺麗処、可愛い処の女子が多い。そんな中で姫川さんは俺の中でダントツだ。

 イケメンの如月君や強面の中山君も、姫川さんが好きって言うか、何度か告白しているとの事だ。玉砕してるみたいだけど。

 悔しいけど尊敬するね。俺みたいに見ているだけで幸せ、とかって弱腰と違うわけで…。


 あの夜、縦穴に落ちたのが俺と姫川さんの2人だったら、もしかしたらフラグが立って、楽しい異世界生活が出来ていた……。などと相変わらずマイドリームワールドな事を考えてしまう俺って…。結局、俺のフラグは立たないんだよね。


 そうこうしてると宿屋の娘さんがやって来た…よ。

 あれあれ?ツインテールを一つのポニーテールにしてはいるものの、街で見かけたあの女の子だ。


「キャーーー!イヤーーー!」

 女の子は俺の顔を見るや否や悲鳴をあげた。

「いや、あの、ちょ……」

 俺の言い分などは全く耳に入らない宿屋の娘さんは、近場の物をヤタラメタラ、俺に投げ付けてきた。

「イヤー!」

 スプーンが

「変態ーィ!」

 フォークが(汗)

「痴漢ーッ!」

 ナイフが……ってナイフはヤバいよ~!

「死んで、死んで、お願いだから死んでーーーッ!」

 何処にあったかは不明だが、宿屋の娘さんより大きい(かめ)を持ち上げているよ?うん、お願いされなくても、其れ来たら死ねるよ?

「えい」

 可愛い声が聞こえたよ(微笑み)。『えい』だってさ。アハハハハ~(涙)。


 ガッシャーーーン!!!


 俺はお星様になりましたとさ。


 Fin~





 …Finでは無かった。生きてた。とりま頭が痛い。

「痛たたた」

 目が覚めた其処(そこ)は、俺の部屋のベッドだった。

「大丈夫ですか?」

 宿屋の娘さんが大きい瞳を赤く腫らして、ベッドに腰掛け俺の頭をタオルで冷やしていてくれていた。

 あれ?なんかチョットエーな感じが……って、小さい女の子に何を考えてるのよ俺は!ドキドキ。


「大丈夫ですか?」

 宿屋の娘さんは近い距離で俺の顔を覗き込むよ~。めっちゃ可愛いいんですけど~(汗)。ドキドキ。


「ごめんなさい」

 宿屋の娘さんがベッドの脇に立ち、ペコリと誤ってきた。どうやら誤解は解けたようだね。

「大丈夫だよ(微笑み)」

「ホントに、ホントにごめんなさい」

 何度も頭を下げる宿屋の娘さんに、俺はベッドから出て、垂れた頭を撫でてあげた。

「誤解が解けたみたいだね。だから気にしないでいいよ」

「ホントですか~」

 瞳から涙を流し、俺を見上げている仕草も可愛い~。

「泣いてたら折角の可愛い顔がもったいないよ(微笑み)」

「あう」

 宿屋の娘さんは頬を少し赤らめ、涙の雫が(ようや)くおさまった。



 俺と宿屋の娘さんはベッドに二人並んで腰掛けていた。

 俺が気絶した後に、宿屋のおやじさんが衛兵を呼び、どうやら其処で俺の容疑は晴れたとの事だった。

「あたし…、あたしお兄ちゃんに酷い事しちゃったよ~」

「誤解が解けたんだから、気にしないでいいよ(微笑み)」

「でも~」

 俺的には女の子とベッドに座って二人きりという、過去一度も無かった状況でドキドキ、バクバクでお腹いっぱいだよ(汗)。

「あたしに何かお詫び出来る事ってあります~?」

 ガハッ!鼻血出そう!いやいやそっちじゃないだろう(汗)。

「其じゃ~、笑って」

「えっ?」

「俺に可愛いい笑顔を見せて欲しいな(ニコ)」

 宿屋の娘さんはピンクのオーラでモジモジしてニコって笑ってくれた。

 ガハッ!激超可愛萌え!天使の微笑みだ!

 俺は慌ててポケットからスマホを取り出した。パシャ!天使の微笑みゲット~!

「何したの?」

「写真をね(ニコ)」

 俺はスマホの写真を見せた。

「何これ?」

「写真だよ?」

「何これ?」

「写真だよ?」

「何これ?」

「……」

 宿屋の娘さんはスマホの画面に釘付けからの

「凄い!凄い!凄いよ~!」

 凄いの爆発でした。


「もう1枚撮る?」

「うん!撮る~!」

 自撮りモードにして、ベッドに腰掛けている俺と宿屋の娘さんをパシャった。

 早速スマホを見ると、人生初女の子とのツーショットがバッチリ撮れていた。超嬉しいんですけど~。

「オッ!旨く撮れたよ(超スマイル)」

「あ、凄ーい!(天使の微笑み)」

「やっぱり笑顔が可愛いね」

「あう(赤顔)」

 ヤバい!宿屋の娘さんの赤ら顔を見ていたら、めっちゃドキドキしてきたよ(汗)。


「お、お兄ちゃん…(頬赤)」

「ん?何?」

「お、お兄ちゃんのな、名前は?」

「ライトだよ(ニコ)」

「ら、ライトお兄ちゃんは暫く泊まっていくの?」

「とりま10日分予約したよ」

 すると宿屋の娘さんは、ベッドからピョンと跳び跳ね、扉に向かって走っていった。扉を開けて部屋を出ようとする。

「あ、あたしはセシリ。宜しくね、ライトお兄ちゃん(天使の微笑み)」

 セシリちゃんはピンクのオーラでそう言うと、俺の部屋を跡にした。


 ズキューン!


 宿屋の娘さんにフラグ立てたらヤバいですか?

【予告 第4話 運命の出会いなの? 前編】

セシリと楽しい時間を過ごしたライト。セシリが去った後、部屋で一人タブレットを見ていたら、突然タブレットが喋りだした?


「オッ、オッケールールル(汗)。お前は誰だ!」

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