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水晶石のブレイブハーツ  作者: 時雨 波輝
6/7

王女の本性

こんにちは、時雨波輝です!

今回は題名の通り王女であるスピカの意外な一面が題材です。

そのため少し短めに読みやすくなっています。

楽しんでいただけると幸いです(^^)

スピカにぐいぐい引っ張られ、俺は高等部の校舎を抜け中庭を闘技場に向かって歩いている。その途中、俺は極力周りを見ないように努めている。

なぜか?

周りからの視線がめちゃくちゃ痛いのだ。

スピカは国民から信頼の厚い王女というだけでなく、容姿端麗、成績優秀、カリスマ抜群といったどこの物語から飛び出して来たんだと言わんばかりの完璧超人なわけで、校内を歩くだけで生徒からの注目を集めてしまう。中には握手やサインを求める者もいるのだからアイドルか何かかとツッコみたくなる。

そんな完璧な王女が無骨で不格好な黒髪茶眼の俺を連れている様は、彼女にとっての非日常すぎてことの他目立ってしまう。また、俺のような純粋な黒髪も珍しくより生徒の視線を集めてしまう。

あちこちで言葉が飛び交い、既に注目の的になってしまっている。中には俺に対して露骨な敵意のこもった視線を向けてくる者もいる。多分スピカのファンか何かなのだろう。

スピカにとっては周りの注目を集めることは日常茶飯事らしく完全に慣れてしまっているようだが、とにかく目立つことが苦手な俺としては今すぐに寮の自室に引きこもりたくてしょうがない。

そんな俺をよそに、スピカは歩く速さを緩めず闘技場へ引っ張っていく。

途中、ふと王女が声をかけてきた。

「ねぇ、なんでキミは付加者(ウィザード)相手にあんな好成績を出せたの?」

先程とは打って変わった口調に俺は自分の耳を疑ってしまう。

「ああ、ごめんごめん。これは私の素の喋り方なんだ。王女としての公の場だったり王宮なんかではそれらしい言葉遣いを心がけてるんだけど、この学園にいる時は私はあくまで生徒だからね」

それを聞いて俺も腑に落ちる点があった。

「だからさっき敬語は不要みたいなことを言ってたとのか」

「そういうこと。仲のいい友達にもそれはお願いしてるんだ。キミも同じ高等部3年だしさ、日常から硬っ苦しいのは性にあわないんだよね」

笑顔を浮かべてスピカは答える。

こうやって一般市民と同じ視点で物事を語れるあたりが国民から暑い信頼を得ている理由なのかもしれないな。

「もう1回聞くけど、なんでキミは人間(ヒューマン)なのにウィザードの実技授業でAなんて成績が出せたの?」

先程と同じ質問をスピカは俺に尋ねる。

少し考え、答えた。

「昔家庭の方針で体術と剣術を習ったことがあっただけだよ。それを実技でやった。ただそれだけ」

俺の口からは簡潔すぎる言葉が紡がれた。

すると、

「それだけ?いくら学年が初等部で全体的なレベルが低いとしても、ウィザードである先生がそう簡単に好成績をつけるとは思えないんだけど」

スピカが納得できないといった不満げな顔をこちらに向ける。スピカの不満はもっともで、目の付け所も鋭い。

実際、今の説明で納得する方が無理だろう。明らかに抽象的すぎる。

なので、さっきより具体的に話す。

「本当にその通りなんだ。しかも俺にそれを教えてくれた人は結構厳しくてね。基礎だけ教わった時点で全部嫌になって投げ出しちゃってさ。ホントそれっきり」

スピカは何も言わずに俺の話を聞いている。

「だからさっきも言ったけど、俺の体術や剣術がスピカのレベルアップの参考になるとは到底思えないんだけど」

俺は表情に特に感情を出さずに淡々と述べる。

実際、間違ったことは何も言っていない。

スピカは少し思考に耽ったのち、再び口を開いた。

「そっか、まぁそういうことにしとく」

その顔には笑顔が浮かんでいる。まだ納得しきれてないようで、少し目が細められるているけど。

本心を言うと、俺は嘘をついていた。答えたことは紛れもない事実だけど、この話にはまだ先がある。でも話せない。いや正確には話したくない。絶対に。

そんなやり取りをしているうちに闘技場の入口に着く。ガラスの自動ドアが開き、スピカに引っ張られるまま中に入る。

そこには受付や観客席につづくいくつかのゲート、地下に続く階段などがある。

スピカは受付前に赴くと係員と話している。

この闘技場に入ったのは実に何年ぶりだろうか。そんなことしか思い出せないくらい、俺はここに縁がない。そもそも脇道を使って寮に帰る時くらいしか近づかないし。

そんなことを考えているとスピカが戻ってくる。その手には首掛けの名札が握られている。

「さ、これを付けて」

そういって、名札を俺に渡してくる。

訳が分からず表情に疑問の色を出す俺にスピカが説明してくれた。

「これから行く私の、正確には私含めて3人が使ってる部屋には魔力によるロックがかけられているの。そこには登録してある魔力を持つ人しか入れない設定になっているから、魔力を持たないキミは入ることができないんだ。でもその名札には特殊な魔力を宿した付加石(エンチャントストーン)が組み込まれていて、それを部屋のドアにかざすとドアが開く仕組みになってるんだ。要はマスターキーってところだよ」

「随分と徹底したセキュリティだね」

「実際、ここまで強固なセキュリティはいらないと思うけどね。まぁ部屋を使う3人が全員女子ってことや、私が王女だってことに起因してるんじゃないかな。実力的に私たちに喧嘩売ろうって人はいないと思うけど」

そう言って苦笑するスピカ。

俺からしたら、むしろ喧嘩売るやからを見ていたい気がする。

ふとスピカの言葉がに引っかかりを感じた俺は何気なく尋ねてみた。

「でも、部屋を使う3人が全員女子って、なんでまた?」

「決まってるじゃない。この学園に存在する3人のXランク、つまり魔法実技においてオールSの成績を取ってる生徒が全員女子だからだよ」

「………はぁっ!?」

数拍置いて、俺は今日一の驚きを覚えた。

学園のトップ3人が一堂に会してる場所、これからそこに向かおうスピカは言っているのだ。

どう考えても場違い感がとてつもない。

思わず回れ右をして帰ろうとした俺の手を容赦なく掴み、地下に向かう階段を指しながら笑顔のスピカは告げる。

「さ、行こ。私の親友とキミの妹さんがお待ちだよ」

ご愛読いただきありがとうございます!

今回はスピカの人間性が題材です。

王女としての公の場と日常でギャップを持つスピカなのですが、こういうヒロインっていいですよね(笑)

結構個人的主観も入っていますが、2つの顔を使い分けられるのは凄く魅力的だと思っています(笑)

そしてリスキが抱える闇のようなものも少し書いてみました。

次回はさらに2人のヒロインが登場します!

お楽しみに(^^)

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