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大学三年を振り返ってみると、グループワークに苦しまされたことしか思い出せない。
最初にグループワークをこなしたのは、入学初めのころだった。あれから何度グループワークをさせられたことか、グループワークのことは正直もう思い出したくもないのがグループワークだ。
しかし、それでも最初の頃よりはましなコミュニケーションができるようになった。
少なくとも話しかけられたらちゃんとした返事をできるようになったし、意見も無難なものを軽く流すように言えるようになったし、相手の思惑を読みとる力を少しだけだが身につけたように思う。というか、奴らの人となりが段々と分かってきた。
例えば、俺がグループワークで出会った全ての人間は、二種類か三種類に分けられると思う。
一つは、出来る奴。二つ目は、真面目なだけの奴。三つ目は不真面目な奴だ。
出来る奴に関しては何も言うことはない。俺から見ても能力があって、与えられたタスクを達成するべく何を行動するかを分かっている奴だ。
真面目なだけの奴は、出来る奴に比べて能力が足りていない。とりあえず今まで見てきた真面目なだけの奴の特徴を列挙するならば、人に物事を説明する際に理解のしやすい単語を避けて専門用語を意識して使いたがる、自己顕示欲が高いらしく人の話に首を突っ込みたがる、人を小馬鹿にすることがそいつにとっての重要な優越感の供給方法であるから「え、こんなのも分からないの?」という顔をしたがる、そして「いやどうして分からないのか単純に疑問なんだけど?」という攻撃性の隠蔽を図ったような顔をしたがる、「何で分からないかなー」という上からのドヤ顔をしたがる、教師と世間話という名の議論(笑)をしたがる、大体物事を否定から入る、その言い方がまた人に嫌われるような客観性に欠けた自分本位な言い方をしている、同族嫌悪で激しく同類と凌ぎを削り合うこともある、でも時々奴らは同族で打ち解けあうこともあるからよく分からない、過剰な敬語を使いたがる、合理的(笑)な主義思想の持ち主、声が作られている(まるでアニメの主人公に影響された小学生のように)、顔が悪い、自分の頭をアピールできるように能力の足りない人間と仲良くなりたがる、能力がある奴を見ると微妙な顔をする、能力がある奴に論破されると不機嫌になる、「あ、そういうことが言いたかったの? そりゃそうよ、それは当たり前じゃん(笑)」と言い繕う、ていうか総じて意識高い系がこれに当てはまる、あとは、大体がアニメオタク、もしくはアニメオタク嫌いなど、まあこんな感じだ。
要するに能力を見せびらかしたいのだろうなあ。能力が無いくせに。しかも、能力が無い自覚を持たないまま独自の自分ひいきの価値観を築いているのだから困ったものだ。大抵、こういう奴らはなんというか、自分に価値を見いだせる部分が他の人間と比べて極端に少ないんだろうなあという外見をしていることが多い。喋り方も気持ち悪い奴が多いのは余裕が感じられないからだろうか。結局のところそれでいて頭が本当に悪いのがかなり悲惨だ。
人は何かしらの取り柄を自信に生きていければ幸せなのだろうが、それで自分に無い取り柄をあると信じて生きていくのはとても馬鹿らしい。本人もきっと安心が足りないのだろう、いかに自分の頭が良いことを周囲にアピールするかを全てにおいて考えているから、話をするときは相手を論破するためにやけに高圧的になって面倒なのだ。見ていて鬱陶しいし気持ち悪いからこういう奴とは当たりたくはない。
それならば不真面目な奴の方がましだと思ったこともあるが、こいつらも似たような駄目な存在だと思われる。
こいつらは、不真面目で合理的な思考をしている自分を美徳としている。勉強する奴を仲間内でくさしてるのはそういう奴らだ。やたら仲間と群れあって自分の意見と仲間の意見が同じであることに気を使う、自分の能力のなさを開き直る、こういうのにエネルギーを使う方が馬鹿なんだよ(笑)という価値観を持っている、能力のある奴を褒めて自分を表面的に卑下して、そして、そんな俺は物事を弁えているし、それはしょうがないことなのだと、いやらしい上目遣いをしながら思っている。
能力が無い奴が陥るパターンの一つがさっきの真面目なだけの奴だとするならば、不真面目な奴らはその二つ目のパターンだ。
根っこにある部分は同じなのだ。自分は他人より劣っているから、秀でた能力もないしそれを身につける努力も出来ないから、そのままでは劣等感で苦しくて生きていけない。だからこそ自分ひいきの価値観を築いて、できればそれを他人と共有して、そしてそれが全てなのだと思いこむ。事実がどうであれ、自分の周りの範囲内において自分に価値を見いだせれば、そうすれば努力できなくても、能力が無くても、それを支えにちゃんと生きていけるのだ。それが、奴らにとって頭良いアピールであったり、頭悪いアピールであったり、他人を攻撃するといったことであったり、友達と群れるといったことなのだ。真面目なだけの人間も不真面目な人間も、そうした事情を抱えながら、自分たちの価値観の中で堂々と生きているのだ。
そんなくだらない奴らを俺は相手にしているのだと思うと、少しだけグループワークも気が楽にならなくもない。いや、そう思うことは、奴らを見下して楽になっているということで、つまり能力に頼らず他人を見下している奴らの同類であるということなのだが。
そもそもグループワークを一緒にやる奴らとは一期一会なのだから、もっと言えば全人生で見る人数から見ればほんのわずかな人間でしかないのだから、もっと大胆にやっても良いように思えてきた。
もっとも、思うのと行動に移すのとは別な話なのだが、人生において何事も気に病むようなことはないのだと思うようになれば、グループワークも、そして俺の人生も少しは豊かになるのではないだろうか? まあ、とは言えどもそう簡単に思い込めれば苦労はしないがな。厄介事も面倒事も普段押し隠していようがすぐに表面に出てきて俺の精神を直撃するのだ。
ああ、嫌だ。嫌だ嫌だ。さっきの人生というキーワードから就職活動というキーワードを思わず連想してしまった。人間はどうしてこうも嫌な事を思い出すのに長けているのだろうか。
大学三年生であるこの頃になると、先の事はあんまり考えたくないし、思い浮かぶ度に追い払っている。
たまに母が「あんたはどういう職業に就けるのかしらねー」などとのたまうが、これはもう全くわざわざ訊かなくても良いことじゃないのか。とてもうるさい。
正直に言ってしまえば、就職活動に関して何一つとして知っていることが無い。いつ活動を行えばいいのか? 活動の内容は? 事前準備は? もしかして今まさに俺は致命的な出遅れをしてるのではないのか? もうさっぱりわからない。
なんだろうか、俺が四年に上がったら大学側で説明してくれるのだろうか? それとももう今学期の後期あたりで説明されるのだろうか?
もう何が何だかわからないし、不安と焦燥で全くしょうがないが、とりあえず思考の外に一旦置いておくことにした。多分大丈夫だろう。大学側で何らかのアクションを取ってくれるはずだ。じゃなきゃおかしい。
しかし就職って、世の中の職業って何があるのだろうか。現時点で就きたい職業は特にない。適正も分からない。どういう職業があるのかも知らない訳だから無理のないことなのだが。あれ、父さんってどんな仕事してたっけ? 改めて考えると案外知らないものだな、まあいいや、いや良くないな。
しかし、勉強はそれなりにしてきたし、大手を狙わなければどこかしら就けるのだろうか。
いやそもそも俺は何を勉強してきたのか。何のために大学で学んでいるのだろうか。俺がここで学んだ内容を一体どのようにして社会で発揮できるのか、こんな底辺な学生が通う学校で身に付けた机上の知識を一体どのようにしてひけらかせるのか、そんなものは何一つとして想像できない。今俺が持っている知識を現実で役に立たせるビジョンが思い浮かばない。
まあまあまあ、就職に関しては、ネットで情報を探そうと思えば探せるだろうが、まあ今でなくともいいだろう。そうだ、今はいい。後でいいんだった。今やれることにだけ全力を尽くさないといけない。
実は、今朝がた、今学期の恒例のグループワークがあったばかりなのだが、なんと、グループ内に一人だけ見たことのある奴がいるのだ。
ただし、本当に一方的に見たことのあるだけで、相手からは全く面識が無いのだが、顔がヒョロヒョロしていていかにもボッチっぽい雰囲気の、大学最初のグループワークで見つけた俺と同類の青白い男が、今学期授業で俺と同じグループにいた。あのボッチバリアとしてスマホをいじってそうな奴だ。
そいつは初日には授業に出席していて、期待にたがわぬ程度に暗めの応対を他のグループメンバーとしていた後、結局二回目以降の授業では出てこないようになってしまった。
多分最終日にか、もしくは中盤のどこかではくるのだろう。そして何事もなく単位を修得する。
それにしてもそいつのグループ内の評価は空気以外の何物でもなく、俺はその様を見つつ、何だかほっと安らいだ気持ちになっていた。
「あれ? △△くんは?」
「さあ、来てないっぽいね」
「ふーん、まあいいけど」
てな会話なもんで、まあ俺は別に発言をしていないわけだが、しかしいつものグループワークよりリラックスして臨めたんじゃないかと思う。
そして何事もなく終わって今に至るのだが、何だかいい気分だ。不安が少ない。今だったらきっと2○○も穏やかな気持ちで見られそうだ。
ただ、この授業は朝一にあるから、すぐに家に帰ることはできない。次の授業は昼過ぎだ。この後にある授業まで、どこかで時間をつぶさないといけないのだ。
そうだな、無難に図書館で時間を潰すことにしよう。まだ読んでない小説もいくつかあった。卒業までに図書館にある全ての小説を消費しないといけないと、俺は勝手に思っている。
ちなみに図書館で小説を読むときには注意がいるのだが、まずなによりも初めに、時間帯を考えることが必要となる。その時間帯とはもちろん、人がいる時間帯といない時間帯のことだ。
どうも図書館を溜まり場か何かと勘違いをしている連中が多いらしく、わいわいぎゃあぎゃあとそれはもう声高く電車の中で電話をするオバはんのような不快な音量でべちゃくちゃべちゃくちゃと何時間も喋り倒した挙句にカードゲームか何かを繰り広げて周りの人間に迷惑をかけ倒しまくるという醜態の極みを晒している人間がいることが多いので、本を静かに読みたかったら、人がいない時間帯を狙って、周りに人がいない様な場所を選んで、しかるのちに本を読まくてはならないのだ。
今は朝一の終わり間際ということもあり、それほど人がいるわけでもない。
いつも俺が愛用している、隣に席がないボッチ専用の孤立している席もちゃんと空いていた。
そこで本を読んでいるときは、何だか知的な気分になれる。まだ朝だということもポイントが高い。さわやかな気分になれる。
しかし、朝早くに起きたせいか、本をじっと読んでいると何だかうとうとしてきた。文字を読むのが辛い。
この小説はちょっと難しい。少し昔めのものらしい。何でこう、難しく書くんだろうなあ。つい本を閉じて本格的にうとうとしていたくなる。いかんな。
図書館で突っ伏して寝ている連中を俺は見下している。ここは本を読む場所だ。寝たいだけなら路上で寝てろと思う。
だから俺はうとうとしながらも、ついつい睡魔に負けそうになりながらも、ちょっとだけ寝てすっきりしてから本を読もうかなと思い始めてきたのだが、ふいに、ガヤガヤした雑音がこちらに近づいてくることに気がついた。
まあたまにある話なのだが、俺がこうして時間帯と場所を気にしながら本を読んでいても、二人か三人くらいの集団が空気を読まずにおしゃべりに来ることがあるのだ。
舌打ちでもしてやろうかと思いつつも、なんとか気を落ち着けてこそこそと騒がしい連中を見ると、連中と言っても二人だけだったのだが、その中に俺が内心俺と同類だと見下していた、あのヒョロ男がいたのだ。
ぎょっとした。朝一のお前が受けてる授業にも来ないで何で今図書館には来てるんだこいつとも思ったが、それ以上に、俺のイメージと全く違う、いかにも友達と会話してますよ的な明るい声でもう一人の男と会話をしていたから、それについつい驚いてイライラしてしまったのだ。
以下そいつらの会話が続く。
「あーくそねみいわ」
「授業サボっておいて何言ってんのお前(笑)」
「いや、寝たの三時だったから。起きられるわけがない(笑)」
「早く寝ろよ(笑)朝一にあるの分かってんじゃん(笑)」
「いやーだってなあ、あの教師だしなあ、やる気出ないわ」
「誰だっけ」
「○○。説明意味分からんし長すぎ。しかもグループワークだし最悪だわ」
「コミュ障には辛い(笑)ていうか尚更休んだらヤバいじゃん(笑)他の人に迷惑だし(笑)」
「俺いてもいなくても同じだから(笑)」
「それで単位だけもらってくるという(笑)。ほんま△△はクズやでえ(笑)」
「悪いとは思ってるけど(笑)しょうがないじゃん(笑)教師外れだし(笑)」
「いうほど悪いか? あの先生」
「いや駄目だわあいつ。人の気持ちを理解できないタイプだもん」
「いやまあ俺もよくその先生のこと知らんけど、そうなん?」
「説明がね、人に理解させる感じじゃないわ。ごにょごにょいってさあ、マジ周りくどいし分かりづらい」
「ほーん」
「まあ、それはいいとして(笑)さっそく見ましょうか(笑)」
「ですな(笑)」
実に不快かつ醜悪極まりないカ○どもによるカ○どものしそうな会話を繰り広げながら、やいやいと鞄をそれぞれ一人用の机に置き自分の居場所を作ると、その机たちと設置してあった椅子たちをガタガタと自分たちの座りよい形へと無遠慮かつ無造作に移動させ始めた。
奴らは図書館を誰の為の場所だと思っているのだろうか。
図書館は公共の場所だ。お前の為の場所じゃない。
皆の場所だから俺も好きに使っていいじゃんという話ではない。他人の権利を侵害するなという話なのだ。ク○め。
これだからこういう奴は嫌いなのだ。世界が自分達だけのものだと思い込んでいるのだろうか? 世界はお前が思っているより広いのだ。決してお前の欲望と優越感を好きに満たせるような世界ではないのだ。お前など世界の隅っこにうずくまるしかないカ○のような存在でしかないのだ。
なまっちょろいヒョロヒョロした顔をしくさりやがって、結局は自分の殻に閉じこもって周りを馬鹿にし続けているのだこういうカ○は。このカ○が。○○。
以下さらに○○共の会話が続く。
「あーねみい」
「イヤホンどうする? かたっぽずつつけるか?」
「え、このままでいいじゃん。スマホのボリューム上げて見ようぜ」
「いや図書館だし(笑)周りに迷惑(笑)△△さんは常識がありませんなあ(笑)」
「それな(笑)」
「いやー、それにしても今週は神回だったな」
「な。さすが今期の覇権だわ(笑)」
「作画がもう迸ってたな」
「やばかったな。切らずにいた俺大正解だわ(笑)」
「一話みたときは切ろうかなと思ってました(笑)」
「俺はこのOP見た時に量産カスアニメだと思ってました(笑)」
「まさかのダークホースだったな」
「この××ちゃん可愛すぎワロタ」
「ロリコン(笑)」
「悪いか(笑)」
「お前あっちの×ちゃんも好きそう。あの学園ハーレムの奴の」
「あのクソアニメな(笑)」
「クソ言うなや(笑)案外面白いやん(笑)」
「だって内容ないですもん(笑)あんなの萌え豚しか見ない」
「お前が言うか(笑)」
「俺はちゃんと作品選んでるから(笑)。何でも良い訳じゃないんです(笑)」
「うっざ(笑)」
「あ?(笑)」
「ていうか内容見ろよ(笑)もうOP終わってるじゃん(笑)」
「てか一度見たし(笑)見る必要なくね(笑)」
「お前が見よう言ったんじゃん(笑)てか俺ら声大きい(笑)超迷惑(笑)」
「すまんな(笑)」
「ええんやで(笑)」
「てかお前が言ったんじゃなかったっけ? 折角だし一緒にもっかい見ながら語ろうぜってさ」
「そうだっけ? 何かあの時盛り上がってたな」
「そりゃ神回だったからな(笑)語るにも熱入るよ(笑)」
「お前は××ちゃんがデレればそれでいいんだろ?」
「それな(笑)」
「それじゃねえよ(笑)お前こそ萌え豚じゃねえか(笑)」
「いやストーリーあってこそだから(笑)。出会って三秒で即デレするクソアニメとは違うから(笑)」
「俺はそういうのも好きだけどな」
「女が可愛ければ何でもいいのかお前は(笑)」
「いや俺は作品に愛が籠ってればなんでもいいわ」
「愛とかぁ(笑)信者は言うこと違うわぁ(笑)」
「信者違うし(笑)」
「円盤買うくせに(笑)」
「いやいいでしょ!(笑)それの何が悪いんだよ」
「あんなクソ高いの今時誰が買うんだよ。しかもクソアニメ(笑)信者以外で買う奴いない(笑)」
「は?(笑)貧乏人乙(笑)」
「言ったな(笑)」
「てかクソアニメじゃないし」
「満場一致でクソだろ(笑)クソすぎて2○○でスレすら立たない(笑)」
「あ? 帰ったら俺が立てるから。毎日一回立てたるわ(笑)」
「見つけたら毎回荒らしてやる(笑)」
「ひどくない?」
「はわわぁ(笑)お兄ちゃんのこと大好きれすぅ(笑)」
「×ちゃん馬鹿にすんな! てかキモイし似てないし声大きい」
「いやあ、完全に○○ですやん」
「お前がな(笑)てか馬鹿にするくせに知ってるという(笑)」
「暇だったから見てやったわ。感謝しろよ(笑)」
「は? ○○(笑)」
二人とも○○。
なんなんこいつら。というか特にその片方。○○。ク○はお前だ。
まず第一にうるさい。図書館で何をごちゃごちゃごちゃごちゃしゃべくり倒してやがるんだ。
時々大声出すし馬鹿か。○○か。
そもそも小声で喋ってるからそれでいいんじゃないんだが。かすれ声が普通にうざいんだが。腹立つんだが。迷惑とか言うレベルじゃないんだが。本当に大学間違えたわこんなカ○がいるなんてよ。
第二に、なんだ、スマホでアニメ見てるの? こいつまさかあれじゃないだろうな。○れ○じゃないだろうな。
俺が今最も嫌悪する連中の一つなわけなんだが? まったく罪にすら思ってなさそうなんだが? 今すぐ顔面殴りに行きたいくらいに憎たらしいんだが? 楽しそうにしゃべくり倒しやがって、ゴミのような会話の節々になんで常識が見当たらねえんだよク○野郎。くっそ腹が立つ。
第三にク○ク○言い過ぎなんだよこのク○カ○野郎。何なの? 何でそんなに攻撃的なの? どうしてそんなに腹立つ物言いしかできないの? もしかしてコミュ障なの? 人と会話し慣れてないの? どうして他人の迷惑にならないように引き籠っていられないの? バ○なの? ていうか○ねよ、消え失せろよ、マジうっぜんだよゴミカ○野郎。
本当に自分の世界で生きてる奴だなこいつは。
絶対社会で苦労するタイプだわこいつ。こんな奴がまともに社会で活躍できるわけがない。
随分と楽しそうにわいわいがやがや周りの迷惑になるほどに騒ぎ倒しやがってここが自分の家だとでも思っているのかな?
もう腸が煮えくりかえってしょうがない。さっきから不快感とイライラが半端ないほどに湧いてくる。
もう目の前が真っ暗になるかと思うほどに怒りで全身が沸騰するようでもうどうしようもないくらいに何かをぶっ壊したい衝動に駆られてしょうがない。。
ああもう腹が立つ腹が立つ腹が立つ。
俺はもういろいろな衝動をこらえつつ、こそこそと図書館を出ていった。
その後の奴らは知らない。きっとイヤホンをくっつけながら変わらずガヤガヤ会話をしているのだろう。
気持ち悪い。○○かよ。いや、偏見はないんだが、あるけど、あいつらに関してはもうどうしようもないくらいにアレすぎる。
次の授業が始まるまでは、そこら辺をうろうろしていた。いろいろ頭の中の情報が駆け巡ってムカムカしてむしゃくしゃしながら歩き回っていた。
その内に、段々と落ち着いてきて、冷静に物事を考えられるほどにイライラが収まってきて、というか足腰が疲れて疲労感が半端ないからどこかで休むことにした。
ちょうど次の授業が始まるころだし、早めに席に着くとしよう。
あいつらがこの教室に来たらどうしようか。いや、どうしようもないが、しかし来て欲しくないことは確かだった。
しかし、そうだな、あんな奴がまともに社会に出てこれるはずが無いんだ。
今の内は自分だけのコミュニティに引っ込んで生きていけるが、就職するとなるとそうはいかない。
学生のノリじゃ駄目なのだ。ましてや、あんな暴言ばかりじゃ駄目だ。
そもそも、授業をさぼってばかりで成績も良くないに決まっている。そんな奴を一体誰が雇うと言うのだろうか?
今だけ。そう今だけなのだ。調子に乗っていられるのは今だけ。
そう思うと何だか胸のつっかえがとれるような気持ちになった。同時にどうしてあんなに、自分とは関係のない無価値のカ○に怒っていたのだろうと不思議に思った。
しかし、このまま奴らのことを考えているとまたイライラしそうな気配がしたので、もう考えるのはよすことにした。
俺は授業に真面目に出て、それなりの成績をキープして、それでもしかしたらそれなりにいいところにいけるかもしれない。
いや、俺のコミュ力じゃ駄目だな。いいとこ、中小の中くらいだろう。
だが、これから、俺のコミュ力を磨いていけば、少なくともあと半年(?)で、まともに就職活動が出来る程度に会話力を身につければ、そうすればもしかしたらいいところに就職ができるかもしれない。
そうすれば、あんな奴のこともきっと気持ちよく見下せるだろう。
あいつが就職に困って、どうしようどうしようと困っているところを、就職の決まった俺が余裕たっぷりに観察するのだ。
へえ、あれが底辺か。大変だなあ。俺には関係ないけど。てなもんだ。
ああ性格が悪い。俺は実に性格が悪いんだなあ。さっき怒ってたから、それの腹いせにこんな妄想をしている。
でも、その妄想を本当にすることもできるはずだ。
それは、これからの俺次第なわけだが、あいつより上にいくことはできるわけだ。俺次第で。
なんだか頑張ろうという気になれた。
何をどう頑張るとか、具体的な事は何も思いつかないし、それはもう明日やろうと思うが、とにかく頑張ろうと思った。
そういえば、その日にK良から電話が来てた。もちろん家の電話だ。うっぜ。なんかグダグダ喋ってたけど結局何の用事があったんだあいつは。
あいつはちょくちょく家の電話にかけてくるのだが、話しをするのも愚痴を聞くのもいちいち面倒くさい。面倒くさいのは、話すことが基本奴の気に入った漫画の事や愚痴ばっかだからだ。奴は高校の頃からそういう話ばっかりしていた。そっちでそういうのを話す相手はいないのか?
ああ電話の音は心臓に悪いとても嫌な音だ。頑張ろうって思える時にこれだよ。水を差してくるよなぁあいつ。