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M-1  作者: パパス
第1章 サンドバッグと呼ばれた父
2/8

朝倉大鼓②

卒業式が終わり、親父と母さんと一緒に帰った。

3人でこうして一緒に歩くのはしばらくなかったな~

親父は毎日トレーニングで、朝早くから家を出て夜の8時過ぎ頃まで帰って来ないし、母さんもここ何年間は土日もパートで忙しく、家族がそろってこうして歩くのは久しぶりだった。

「親父大丈夫なのかよ?」

「何がだ!?」

「いや、何って…

試合に決まってんじゃん!

親父めっちゃ弱いのに試合の準備とかしなくていいのかよ!?

相手はチャンピオンだぞ!ちゃんと準備しとかないと殺されるかもしんないぞ?」

俺が皮肉まじりにそう言うと

「平気平気!!

準備ならもうずっと前からできてるさ!

今はそんなことよりもお前と母ちゃんとこうして3人で歩いてる方がかえってリラックスできて試合前にはちょうどいいわ!」

親父はそう言ってニッと笑うと俺の首を右腕でガッチリホールドして俺の髪を撫で付けながらくしゃくしゃにした。

「バッ…!!

バカ野郎!!

恥ずいだろっ!!

誰かに見られたらどうすんだよ!!バカ親父!!

母さん助けて!!」

「仲が良い親子だな~って思われるだけだろ!

な~母さん!!」

「え~!

きっと仲が良い親子だって思うんじゃないかな。」

母さんはそう言って笑っていた。

そして、親父が今度は暴れる俺を無理やり肩車しようとしてきた。

やはりサンドバッグってアダ名はつけられていても一応は親父も喧闘士だ。俺は身長173㎝、体重61㎏と小学生にしてはデカイ方だと思うんだけど…

軽々と俺を持ち上げ、無理やり肩車された。

俺は大人しく親父の肩車ごしに見える景色を眺めていた。

抵抗は無意味だと悟ったからだ。

「おい祭!

試合絶対見に来いよ!」

「……………気が向いたらな」

「ダメだ!絶対だからな!絶対来いよ!!絶対!!」

「ハイハイ。私と二人で試合見に行くから、お父さんは試合頑張ってね。」

母さんがそう言うと親父は満足そうに

うんうんとうなずき、俺を肩車しながら家まで走りだした。



家に到着するなり親父は試合の準備があるからと言って着替えを持って、スーツのままと出て行った。

さっき準備できてるって言ってたじゃん…

「ねえ母さん。親父って確かB級喧闘士だったよな?

何でチャンピオンはわざわざ親父なんか指名したんだろう?

やっぱり親父を噛ませ犬にしたいのかな?」

「……………さぁね……なんでだろ?

私にはわからないわ。」

母さんは少しの間を作り、悲しそうな表情を消してから作り笑いを浮かべた。

俺にはなんとなくわかった。

「そういえば親父が俺らに試合見に来いって言ったのは今日が初めてだね。

いつもはそんなこと言わないのにな。」

俺がそういうと母さんは何も言わずに洗濯物をたたみはじめた。

これ以上は聞かないでってことだと思ったので俺はそれから何も言わずに、まだ試合開始まで時間があるので少し昼寝をするためにリビングを後にした。



大鼓は試合会場の控え室で一人物思いに耽っていた。

ダメだ!

やっぱり何もしないで考えてばっかりいると足が震えてくる。

少し走ってくるか!

いや、あと2時間後には試合が始まるからおとなしくしてなきゃかな?

いやでもやっぱり……

大鼓は一人で悩み続けていた。

 


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