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M-1  作者: パパス
第1章 サンドバッグと呼ばれた父
1/8

朝倉大鼓

「おーい!サンドバッグJr

お前の親父、また今日もサンドバッグみたいに殴られて終わりか?」

ギャハハハッ!

今日も教室内に親父への侮辱の笑いが響き渡った。

朝倉祭(あさくらまつり)はじっと下を向き唇を噛みしめていた。

今日は小学校の卒業式。

祭の小学校の楽しかった思い出は低学年の頃まで逆行しても思い浮かばなかった。

もちろん楽しいはずの小学校生活最大のメインイベントの修学旅行も彼にとっては苦痛でしかなかった。

原因は一つ。

父の朝倉大鼓(あさくらだいご)のことである。

父の職業は格闘家。

そう、あの大人気格闘技 戦道(せんどう)のプロ喧闘士(ファイター)だ。

そんな親父は今日、戦道の日本チャンピオンとタイトル戦を控えている。

想像してみてくれ、父親がプロの格闘家。しかも、ベルトをかけてチャンピオンと試合をする。

お前の親父すげーカッコいい!!とか、お前の親父憧れる~とかってちやほやされて

きっとクラスの人気者になるよな。

そう…強ければ…

俺の親父の場合は真逆だった。

いつも対戦相手にボコボコにやられて

倒れても何も出来ないのにいつも立ち上がるんだ

そしていつも立ったまま気を失う。だからサンドバッグというアダ名がついたんだ。

殴られるために立ち続ける、俺は親父のそんな姿を見るのが嫌だった。

チャンピオンがわざわざ弱い親父を対戦相手に指名したのも、自分の強さを世間に見せつけるのに、親父は最高の噛ませ犬だったからだ。

世間の人間はというと、マスメディアがよく親父を中傷した報道をするので、大人も子供も、よってたかって親父をバカにする。

そして、その矛先は家族にまで広がる。

俺は小学校にあがるころにはクラスメイトにバカにされはじめて、小学校3年生くらいの時からサンドバッグJr というアダ名をつけられて、ずっといじめを受けていた。

俺の母さんの場合は、パート先のスーパーで職場の同僚や店に来る客によく親父の悪口を言われたりしているらしい。

おまけに近所の人達からも、嫌味話の話題の種にされていた。

だけど、母さんは俺とは違って、いくら世間の人から親父の悪口を言われたりしても親父への尊敬の気持ちは全然無くなってなかった。

俺は親父のことをクラスメイトにバカにされる度に少しずつ親父のことを嫌いになっていった。



卒業生入場


パチパチパチパチ!


在校生達の拍手にむかえられて入場した。


ふと来賓席の方を見ると、まだ入場なのにハンカチで目を押さえながら泣いてるガタイがよくて、白髪まじりの短髪で、パツパツのスーツを着た親父の姿が目に入った。

その横で着物姿で少しふっくらした優しい顔の母さんが俺に微笑んでいた。

(試合前なのに泣いてんじゃね~よ

俺はまだ入場しかしてないじゃん)


そんな親父の姿を見て少し笑みが浮かんだ。




小学校の卒業式と親父のタイトルマッチ戦が重なった日


あの日は俺の人生の中で最大のターニングポイントになった日


俺の長い戦道人生の始まりを告げた日だった。








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