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13 BLCD

「朱美、薫遅かったね」


 玄関で出迎えてくれたロリックマに「おー」と適当に返事をして、借りてきたCDの入っている黒い袋を食卓に置く。

 薫さんのロリックマ愛は健在のようで、玄関まで迎えにきてくれたロリックマを軽く持ち上げて頭を撫でていた。なんなのその愛で方。



「薫さん、借りてきたやつ見ていいですか」


 私は先ほどのドライブソングを借りていた間に薫さんが、エロイCDを借りてきてくれたのだ。

 薫さんはイヤそうな顔をしていたが、夫婦で借りにいくよりかはマシだと言いくるめれば納得してくれた。


 ごそ、と取り出して出てきたのは「お兄ちゃんCD」というどう考えてもいろいろアウトなヨウジョが描かれたジャケットのCDだった。



「薫さんの趣味、なかなかですね」

「俺の趣味じゃねぇよ、なんかアニメコーナーっぽい所いって適当に借りたらそれだった」


 薫さんも私に突っ込まれると思っていたのだろう。少し頬を染めて全力で否定してくる。

 ……お兄ちゃんCDねぇ。残念だけれど、私はそんなヨウジョじゃないよ。きっと変態お兄ちゃん御用達のCDであろうから、コッテリロリボイスなのだろう。

 流石に早紀ちゃんと颯太君をロリボイスで騙せる自信は私にはない。



「いや、ちょっとこれはアウトでしょ……」


 そう呟き、もう一枚のCDを取り出す。

 そこには二人のイケメンと「俺の愛に溺れな」というタイトルのみがでかでかと書かれていた。



「それはなんかイケメンだったから借りた」


 確かにジャケットの二人はイケメンである。

 上半身裸にネクタイというパリコレモデルもびっくりのファッションセンスであるが。

 「俺の愛に溺れな」とタイトルで命令してくれる位であるのだから、よっぽどヒロインの事を愛してくれるのだろう。


 女の子の絵が描かれていない事に若干の不安を感じたが、乙女ゲーしかりこういうもののヒロインは書かれていない場合が多い。

 イケメンを一匹でも多くジャケットに押し出す事で多くのお姉さま方を釣れる可能性が高まるからだ。


 寝室の電気を付け、薫さんとコンポの前に立つ。

 そう言えば昔はここから良い感じの音楽を流して二人で良いムードでお酒を飲んでいたなぁなんて考えて、頭が少し痛くなった。


 私は電源を付けて、「俺の愛に溺れな!!」と言ってCDをコンポに突っ込む。

 初めの方はいらない会話とかありそうだし。はじめっから濡れ場でいいのよ。なんて思いながら私は次へボタンを連打した。




 すると、衝撃的な音が。


 私たちの期待していたアンアンではなく、男が男を責めているホモ♂な音声がこの寝室に響き渡り始めたのだ。

 隣の薫さんを見れば何が起こったか分からない、と言った表情をしている。

 茫然としている薫さんから、音量などをコントロールできるこのコンポのコントローラーを奪う。


 今だなお部屋に響くホモ♂とホモ♂のハーモニー。



「くそっ! 止まれよ、止まれ、止まれ、止まれ止まれ止まれ止まれぇっ!」


 そう言ってコントローラーを連打するものの全く反応しない。

 「人の造りしほも」に冷や汗が止まらない。私は乙女ゲームなどもプレイしてきたため人間としていろいろ腐っているのだが、私の隣の彼や、ロリックマがこの状況を飲み込める訳がない。



「よ、よく分からんがこの女は凄く声が野太いって事か?」

「うるせぇ! とりあえずいいから黙って消す努力をしろ!」

「朱美、それ電池入ってない」


 ロリックマのその言葉を聞いて、ベッドにコントローラーを投げつけ本体の電源ボタンを押してぶっちいと電源を切った。



 部屋が沈黙で包まれる。

 薫さんを見れば、相当混乱しているようで「俺の知ってる女はこんな事言わない」なんてメンヘラくさい発言をしている。


 何が「俺の愛に溺れな」だよ。お前の愛に溺れた結果がごらんの有様だよ。どうしてくれんだ、この空気。

 するとこの最悪な空気に追い打ちをかけるように、私の電話が鳴った。



「……朱美ちゃん、今ね、隣の部屋から、男と男の人の声が聞こえたよ……薫くん浮気してるのかな……早紀も颯太くんも心配で死んじゃいそう……」


 うるせぇ、こっちは気まずさで死にそうなんだよ。










 薫さんがご丁寧にも調べてくれたお陰で、結局あのCDは世に言うBLCDである事が判明した。


「俺には男同士の声じゃなくて、可愛い女の子の声が必要だったんだよ!」と薫さんは電話越しの店員さんにキレ気味だったけども、店員さんからすれば単なる変態さんからのクレームである。

 私はその店員さんに同情しながら、ロリックマを挟んで隣に座る薫さんを見た。



「くそ、わざわざ車まで出して借りにいったのに」

「ほんとそれですよ」


 薫さんはイライラしているようで、ズボンのポケットからぐちゃぐちゃになったタバコの箱を取り出す。 しかし隣に座っているロリックマを見て「あ、ごめん」と言いポケットにタバコをしまった。ほんとにこの人ロリックマに甘いな。



「タバコ、体に悪いからやめなよ。おいらも肺がんになったら困るし」

「お前の中には綿しかないだろ」


 私がそう突っ込むと、ロリックマがぽか、と私を軽く殴った。

 でもロリックマに肺があるとは思えないし。本当に副流煙がなんちゃらなんて、同僚のゆるふわ系女子みたいな事を言うのはやめにしてほしい。



「……朱美も薫も、さっきまで吸ってただろ。匂いで分かる」

「匂いとか分かんの」


 私がそう言うと、ロリックマは「分かるよ!」と大きな声を上げた。

 私たちは自分の匂いだから気づいていないようだけれど、第三者のロリックマにはお見通しのようだ。



「朱美と薫、同じ匂いがする」

「あー……まぁ同じタバコ吸ってたし」

「昔は、違うタバコでしたけどね」


 私がそう言うと、薫さんはやけに驚いた顔をしていた。

 何をそんなに驚いているんだか。

 まさか貴方と同じ匂いになる日が来るとは、とわざとらしく言うと薫さんは俯きがちに少し笑った。



「昔、俺と同じ匂いだったのは、お前の彼氏だった」


 そんな大胆ホモ♂宣言に乾いた笑いがでた。この人ほんとに何言ってるんだか。

 まぁこの人がホモだろうが何だろうが別にどうでも良いけど。


 それでも、薫さんのネクタイは私が結ばなくっちゃいけないのだから「裸ネクタイ」なんていうホモ♂スタイルだけは勘弁してくださいね。


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