部下(バカ)と異世界神(クズ)は余程死にたいようです。
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※2/14にジャンルを変更しました。
ある日、ある人物が死にました。
死んだ原因はいきなり現れた鉄柱が頭を貫いたことによる出血死です。
周りに工事現場はありませんでした。
具体的に言うとその人物の半径10キロ以内には一つもありませんでした。
理不尽です。
運を司る神様の悪意しか感じられません。
あのいきなり出現した鉄柱は悪意を具現化したものですね。きっと......。
「本っ当っにっ!すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
あるところでそれはそれは綺麗なスライディング土下座をしたおじいさんがいました。
そしてそのおじいさんの目の前にいる少年はすごくヒいています。
「ワシのミスで...本当に本当に何と言ったらいいか...」
「い、いや……そこまで言われるとこ、こっちが……」
おじいさんは泣きながら謝ります。
それを見ている少年はオロオロとします。少年の良心がチクチクと痛みます。
少年は目の前のおじいさんのミスで死んでしまったのです。
最初は何殺っちゃてくれてんのぉぉぉお!!と怒っていた少年ですがプライドをかなぐり捨てたおじいさんの謝罪にだんだん頭が冷え、冷静になり、今に至ります。
おじいさんの粘り勝ちです。許してくれるまでずっと謝りっぱなしでしたしね。
「あの〜ゼウスさん…もういいですから…許しますから…」
こうなってしまったら許すしかありません。少年が優しいのもありますが日本人はこういう場面では弱いのです。
「ほっ本当か!?この恩、何と言ったらいいか……そうじゃ!!お詫びとして異世界に連れってってあげようか?」
おじいさんはみるみるうちに元気になりました。さっきまでの姿勢は影も形もありません。
現金な奴です。きっとあんな状況になれば許してくれると思っていたようです。
「えっ…い、異世界!?(テンプレだなぁ…)」
「そうじゃ!異世界じゃ!新天地で青春を、新しい人生を謳歌……楽しいぞ!!」
おじいさんのノリノリの叫びは空しく響きました。
何故なら、この空間はまるで極寒の地にいるかの様にヒンヤリと冷たくなっていたからです。
「“新天地で青春を、新しい人生を謳歌”、ねぇ……今の人生を台無しにしたのは誰かしら?」
「“手違い”ですか……。故意でない限り、死ぬことはないと私は把握していたのでですが……今後のためにもご説明願います」
見目麗しい女性たちが背筋を凍らせるような綺麗な笑顔でやって来ました。
少年は女性たちから漂う怒りのオーラから空気を察し、背景と同化することにしました。
おじいさんは女性たちから漂う怒りのオーラにも少年の気配が薄れたことにも気づかず、恭しく女性たちを出迎えました。
少年のことはもう頭にありません。ほったらかしです。
「これはこれはお二人が揃うだなんて……私に何かご用ですか?」
おじいさんは何かを期待するように二人を見つめます。
さっきの言葉は聞こえなかったようです。少年にはハッキリと聞こえたのですが……神様と言えど老いには敵わないようです。
「フフ……ゼウスだなんて……。外国の最高神の名を語るとは……あとで何と謝ればいいか……」
おじいさんの笑顔にピシリとヒビが入ります。
女性はそんなこと気づかない様子で困ったわ……と顔に手をやります。
全然困っていないです。さっきの笑顔継続中です。怖いです。ここまでいくともう恐怖しか感じません。
「貴方、一応とはいえ神に属しているでしょう?だったら私たちが来た理由、分かっているはずですよね?」
空気になっていた少年は驚きます。
だって全知全能の神だと思っていた人物は一応、神に属している人だったのですから。まさか名を偽っているとは思いませんでしたから。
はて……なんのことでございましょう?とおじいさんは冷や汗タラタラでとぼけます。
その場の温度がさらに下がります。
この時点でおじいさんは薄々ですがヤバイことに気がつきます。
でも、もう後の祭りです。
ですが良かったですね。これでも気がつかずにお二人の機嫌を損ねていたら文字通り、後の血祭りになっている可能性が大でしたから。
「見苦しいですよ最下神ズク。いえ……最下神と言うのも烏滸がましいですね……精霊、とでもいいましょうか」
女性の言葉におじいさんの顔色はみるみるうちに蒼くなっていきました。
「下界の者を故意に殺害、無許可の異世界転生そして異世界召喚……重大なことをしでかしたことは分かっているわよね?下手したら謀反ものよ?」
「下界の者を死なせるのも異世界転生、召喚させるのにも許可が必要なことぐらいは周知の事実。それでもやるとは……救いようがありません」
「罪状は日ノ本の神に対する謀反。罰は神属から抹消、下界への永久追放」
「待って下さい!!どうか…どうか御慈悲を…!!」
「慈悲などありません。最下神ズク、貴方を最高神、天照大御神と伊邪那美命の名において断罪します」
おじいさんはその場から消えました。
女性たちは清々しい笑顔で少年の方を向きました。
「天照大御神…サマ…?伊邪那美命…サマ………?」
まさかの人物に少年の脳は停止寸前です。
「はい、そうです。私が天照。この方は私のお母様の伊邪那美です」
天照様は平然と紹介します。
「ごめんなさいね。あの元神のせいでとっても迷惑をかけちゃったわね………」
「このことに関してはこちらの落ち度で貴方に迷惑をかけました。本当にすみませんでした」
天照様と伊邪那美様は頭を下げます。少年は慌てて頭を上げるように言います。国神に頭を下げられるなんて心臓に悪いですからね。
「ダメです。あのバカのせいで“貴方”は死んでしまったのですよ?」
「本当に悪いけど……下界に戻ることは出来ないわ。戻るとしたら記憶は無くなって違う貴方として…………」
少年はもう生き返られないようです。生き返るとしたら輪廻転生するしか無いようです。
「あ、大丈夫です」
「そうよね…大丈夫なわけ…………え?」
少年のケロッとした態度にお二人とも唖然です。
「もう起こっちゃったことは仕方ないですよ。ボクと同じことが起きないようにしてくれればそれで良いです」
少年は聖人でした。
不覚にも伊邪那美様はポロっときました。
「分かりました。この天照大御神の名に賭けてこのような事態にならないよう全力をかけて阻止します」
天照様は少年の願いを叶えようと固い決意をします。
「私もよ。でも、せめてもの罪滅ぼしをさせて」
「え?」
いきなりの懇願に少年は固まります。
「そこまでのものじゃないけど………貴方の次の人生が幸せに長く過ごせるようにね」
「は、はい。ありがとうございます?」
「フフ…………どういたしまして?」
こうしてバカ神たちの断罪イベントが終了しました。
次の日、珍しく月詠様が仕事をしていました。
姉である天照様が仕事で外出しているのでその間、仕事を任されたからです。
「あ、天照様のご帰還です!!」
天照様についていた侍女が先行して帰ってきたことを知らせます。
心なしか顔が青ざめているように見えます。
「おかえりなさい。姉s…………」
月詠様が止まりました。
何故なら天照様は笑顔だったからです。背後に般若が見えるような笑顔だったからです。
「月詠、私暫らく書斎に籠ります」
天照様はそう宣言するやいなや机の上に床に置かれた書類を全て持って行きました。
「ま、待って!!姉さん!机の上に置いといたやつだけは持って行かないで!!」
月詠様の静止は届きませんでした。天照様はもう書斎に籠ってしまいました。
『勇者召喚契約…………?あの元神、何変なもの結んでんのよ──────!!!バカなの?アホなの?なんで…なんでこんな重大なこと…最下神単独でやってんのよ!?
……………………もういいわ…………あの異世界神とバカたち殴り倒す。コロス。』
それを聞いた月詠様はガタガタ震え書類を取り戻すのを諦めました。
君子危は近寄らず、です。
お、思ったより長かった…………
☆続き、あります(投稿日は未定)
2/14に投稿しました。