第8話:夢から覚めて
目を開けるとまず目に入ったのは、天井。そして枕元に座った母親と父親の姿だった。
「疾風!!良かった」
「この馬鹿者が」
二人は、疾風の無事を確認すると心底ホッとした表情を浮かべていた。
「あれ?何で俺、寝てるわけ?」
疾風は、先ほどまで薫とあの不思議な空間で話していたはずなのにと思いながら身を起こす。
それともあれはただの夢だったのだろうか。
「あなたは、倉で倒れて二日も目をさまさなかったのよ」
「二日!?」
母親の言葉に疾風は愕然とする。
(魂を呼び寄せたって、おいおい、勘弁してくれよ)
布団から身を起こすとグーと腹の音が鳴った。
「腹減った」
疾風のいつもと変わらない様子に安心したのか、両親は苦笑する。
「待ってなさい。ご飯を持ってくるから」
母親は、そう言い残し、去って行った。
その姿を見送ると父は厳しい顔つきで疾風に問いかけてきた。
「それで、何が起こったんだ?お前は、あの嵐の前で倒れていた」
「あー、それね。何て説明したらいいか・・・・・・」
とりあえず、疾風は倉での出来事と薫との出来事をなるべく分りやすいように説明した。
それを聞いた父親は唖然とした表情で固まってしまう。
「おっ、親父?」
「とりあえず、その話は明日だ。今日はもう遅い、食事をして眠りなさい。自分が思っているより体はだいぶ消耗しているはずだ。いいな?」
「・・・・・・・はい」
疾風が素直に頷くのを見届けると父親は、部屋から出て行った。
「いったい何だってんだよ」
いつにない父親の真剣な態度に疾風は内心びくついていた。
どうしようかと考えている時、右の手のひらを固く握っているのに気付く。
その手を広げると中から、緑の石のピアスが出て来た。
そのピアスは、夢ではなく現実だということを疾風に知らせているようだった。
そして次の日の朝、疾風は本部から呼び出しを受ける。
そこで待っていたのは当主会の幹部の面々と思いもよらない命令だった。
呼び出されるたびに倒れて数日たつのは勘弁してくれですよね(笑)