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第6話:呼び声

 倉の鍵を開け扉を開いて中に入ると余り埃がなかったので驚いた。

 昨日まであさっていた倉は、かなりの埃があり、風精の力を借り大々的に掃除をしたほどだ。

 「あんまり、本はないなー」

 疾風は、倉の棚や木箱を探るが目的の物はないらしい。

 「もしかして、ここには本とかは置いてないのか?」

 疾風が首を傾げ考えていると、どこからか声が聞こえてくる。

 ―――――――――・・・・・・・・おい・・・・・・・・こっち・・・・・・・。

 疾風は、辺りを見渡し声の出所を探す。

 どうやら倉の奥が発生源らしい。

 「おいおい、まさかジジイのコレクションからか?」

 疾風達の祖父、つまり前当主は骨董を集めるのが趣味だった。それも曰くつきの物ばかり集めるという余り誉められた趣味ではない。

 実際、夜になると鳴り出す笛やら動き出す人形やらを嬉々として見せられた疾風は、半ばトラウマになっていた。

 「最悪だ。・・・・・・・そうだ!俺は何も聞こえなかった、聞こえなかったんだ」

 そう自分に言い聞かした疾風は、倉から出ようと早足で入口へと向かう。

 そしてあと一歩で入口という所でどこからか突風が吹き荒れ、その扉を固く閉ざしてしまう。

 「マジかよ!!しかたない。風精よ、我に力を貸したまえ」

 風精に呼びかけるが何の音沙汰もない。

 これはおかしいと疾風は思った。

 かなりの上位の風精とも意思疎通が出来る疾風の呼びかけに風精が答えないなどあってはならない。

 里では二番手でも一応、本家の跡取息子なのだ、いついかなる場所でも風精を呼ぶことが出来るという力があるからこそ周囲の人間もそう認めているのだ。

 疾風は、頭をがしがしとかくと深呼吸をして数秒、瞑想する。

 (何か、原因があるはず・・・・・・・。やっぱりあの声か)

 疾風は、周囲を警戒しながらその原因を探る為に奥へと向かう。

 周囲の物に身を隠し、気配を探りながら確実に歩を進めて行く。

 そして、その原因らしき一本の剣を見つける。

 日本刀というよりも洋刀と言ったほうがよいだろうか、その柄の先には丸い薄緑色をした石がついている。

 「・・・・・・・剣?これが呼んでいるのか?」

 剣の前に立ち、思案しているとまた声が聞こえてくる。

 ―――――――――我に答えよ。

 「お前は何だ?」

 ―――――――――我を手に取り、答えるがいい。

 疾風は、ためらいながらもその剣に手を伸ばす。

 心の中では触れてはならないと警鐘が鳴っている。が、その警鐘にもまさる自分を引き付ける何かがこの剣から発せられているのだ。

 そして疾風が剣を持ち上げた時、その剣から信じられない量の風の力が巻き起こる。その風は周囲の物を吹き飛ばし、ついには倉の分厚い鉄製の扉さえも吹き飛ばしてしまった。

 ―――――――――ついに、見つけた。我を持つべき風の申し子。我が主よ!!

 その声を聞いた瞬間、疾風は意識を失った。


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