第5話:それぞれの道
首都にある本宅に来て、早一週間が経過した。
最初の内は緊張していたが、とりあえず本部に顔を出しただけでどこに配属されるかはまだはっきりしていない。
昨日、雪からメールが届き、無事に高校の寮に入ったと報告がきた。
「あ――、暇だ。暇すぎる」
武術鍛錬をしようにも何やら本部でばたついているらしく道場に顔を出しても鍛錬に付き合ってくれる人間がいないのである。
「俺も雪みたく学校に行ってればな・・・・・・・」
一族の子供は中学卒業と同時に道が二つに別れる。
一つは、風をあやつる能力に長けた者が進む道。疾風や涼の進路である。ある程度の能力を持った者は自動的に風軍への配属が決定され、各自それぞれの土地に配属される。
もう一つは、風をあやつれても風軍に入るまでの力を持たない者。これは妹の雪が取った進路。
進学し、知識を身に付けこの国のありとあらゆる分野に人脈を広げる役目を負う。
雪は、昔から人一番努力してきた風軍に入るために。でも、それは叶わなかった。
だから、力に恵まれた自分はこんなことを考えてはいけない。いけないと思うのだがどうしても思ってしまうのだ。
何で、自分はこんな家に生まれてしまったのか、普通の家に生まれたかったと。
それに、雪の側を離れるのは心配だった。雪は、風の力には恵まれなかったが特殊な力を持っていた。
すべての精霊の声を聞くことが出来る能力。
これは、ある意味やっかいで様々な精霊が寄って来てはちょっかいをかけるので始末が悪いのだ。
声が聞こえてることさえ気付かれなければ寄っては来ないけれども、聞こえない振りもつらいと雪がこぼしていた。
(俺が側にいれば散らしてやれるんだけど)
「あー、考えても仕方ねぇ。とりあえず、倉で本でも探してくるか」
疾風は、庭にある倉へと向かう。この倉には一族に関係する様々な文献がある為、暇な時は勉強するようにと当主である父親から命令が出ていたのだ。
元々、読書が好きな疾風は大体の書物は読んでいたので今日はいつもの倉ではなくもう一つの倉をあさってみることにした。
疾風は後に倉に入ったことを死ぬほど後悔するはめになる。