第51話:ミーティング
墓参りを済ませ、マンションに帰ると2階の会議室にはもう晶や雪達の姿があった。
「お帰りなさい、疾風。薫殿も」
部屋に入ると雪が出迎えてくれた。
「ただいま」
「どうしたの?元気ないわね?」
「そんなことねーよ。何か飲み物とかある?」
疾風は雪の問いを受け流して中へと入る。
そんな疾風を不信に思った雪は薫の服の袖を掴みこっそりと話し掛ける。
「何かありました?」
「・・・・・・・・青春真っ只中だからな」
薫の答えに益々雪は首を傾げるばかりだった。
(この兄妹は、鈍いな。2人そろって。これじゃあ大変だな)
部屋に入って来た疾風の顔を見て、晶はおおよそのことが見当がついたがここはほっておくことにした。
「まずは、お互い探ってきたことを報告しましょう」
「雪はどうでした?」
「とりあえず、幼馴染の所へ行ったの。事件の事を聞いたけど、支部のほうでは余り大事にはなっていないみたいなの。それと言うのも感染者にこれといって共通点がないし、一族の関係者もいるけど普通の一般人もいるからだそうよ」
「僕の所でも似たような感じでしたが一つ気になることがあります。現場ではかならず黒衣の少女が目撃されていました。そして、感染者達と事件を起こす数日前に接触があったと」
「凛なのかな?」
晶の報告を聞き、疾風は呟く。
「さぁ?黒衣を纏った少女なんてどこにでもいますからね。疾風達のほうはどうでした?」
「華音のお付きだった葵っていう女性に会ったのと、焔の炎輝っていう精霊に会った。それ以外別に異常は感じられなかった」
疾風の言葉を聞き、それまで控えていた涯は、薫に尋ねる。
「呼び出せたのか?」
「ああ、依り代は変えていなかった。ただ、時枝に従う意志はないということと小姫を亡くしたショックで華炎が暴走したので押さえ込む為に異界から自分達のテリトリーと切り離したと言っていた。扉の方は今は何ともないそうだ」
「そうか。炎輝がそうまで言ったのだ事実だろうな」
「あまり収穫はないようですね。出きることと言ったら、その黒衣の少女を探すことですか」
「探すって・・・・・、晶君。この広い土地でどうやって」
「闇精を従えているのなら、薫殿や涯なら気配を辿れるのでは?」
「出来ないこともないがな。ただ相手が力を行使しないことにはな」
「あと、雪なら闇精の声を拾えるのでは?」
「彼等はあまり寄ってこないの。でも、やってみる価値はあるのかも」
「とりあえず、この間の現場から探ってみましょう」
藤堂の双子は基本的に色恋には鈍いです。
その鈍さで村では、何人もの人間が泣いてます。
多分、恋愛=結婚という構図が出来上がっているからです。