第48話:炎輝
現れたのは、長身で長い黒髪を一つに結び薄紅の着物に白布の下衣を身に付けたきれながの目をした男だった。
「仲間の呼びかけにも答えない奴がよく言うぜ」
「別に用はないからな。どうしてもと言うなら異界で会えば住むこと」
「その異界から自分達のテリトリーを切り離しておいてよく言うぜ」
「仕方あるまい。切り離さねばこちらや他の異界の地に影響が出てしまう」
「どういうことだ?」
「それより、そこにいるのはお前の主だろう?紹介くらいはしろ」
急に自分に話を降られた疾風は驚く。
「ああ、こっちが疾風だ。まだまだひよっこだが当代一の風使いにするさ」
「お前に見込まれるとは不憫だ。初めまして、俺は炎輝だ」
「藤堂 疾風です」
かしこまる疾風を見て炎輝は表情を柔らかくする。
「それで俺に何の用だ?」
「時枝のお嬢さんが困っていたぞ。呼びかけに答えないと」
「俺の主は、天見に連なる者だけだ。それ以外には答えるつもりはない。まさかそんなことで呼び出したのか?」
「まさか。単刀直入に聞くが、小姫は生きてるのか?」
「どういう意味だ?」
「いや、最近起きた事件がらみでね。闇精の力を使う少女が疾風に言ったんだよ。見ていることしか出来ない華音の悲しみに気づけってな」
「そうであったらどんなに良かったか」
薫の言葉に炎輝はポツリと呟く。
「何故異界からテリトリーを切り離したか聞いたな?」
「ああ」
「十年前の事件が起こった時、俺達は小姫を守ることが出来なかった。そして小姫を失った時、華炎が暴走したんだよ」
「暴走?」
炎輝からでた物騒な言葉に疾風は、強張る。
「ああ、アイツの炎は破滅の炎。それが暴走したんだ、屋敷で大きな火柱があがり燃え上がった。そして小姫の亡骸も当主達の亡骸も燃やし尽くした。何とか俺の力で押さえつけることが出来た。そしてアイツは眠りについた、悲しみで狂った心のまま。だから異界から切り離した。何が起きるか分らないからな」
「・・・・・・・・そうか。お前がそう言うのだからそうなのだろう。あと最近ここいらで邪に染まる者達が増えている。扉が開いているのか?」
「いや、扉は閉じている。まぁ、近い将来どうなるかは保証できないがな」
「ならせめて時枝のお嬢さんに力を貸してやってくれないか。彼女は一族のことを考えて行動しているぞ?」
「あの娘では駄目だ。あの娘の一番守りたいものは一族ではない。それを守ることに力は貸せない。焔の者としてはな。悪いが話しはここまでだ、異界から華炎の炎が漏れそうなのでな」
そう言うと炎輝は出てきた時と同じように一瞬で姿を消したのだった。
「椿さんの一番大切なもの?」
炎輝の残した言葉に疾風を首を傾げた。
(あれだけ一族のことを考えている人が・・・・・どうして駄目なんだ)
下衣と書きましたがようはズボンみたいな感じの衣装です。
名称がよく分らないのでこう書きました。