第46話:墓守
「ここが何処だか分っていての狼藉か!!」
現れた女性は、殺気を身に纏い疾風達を睨みつける。
「待ってくれ!俺の名は藤堂 疾風。天牙衆の者だ」
「藤堂?青嵐の若君か・・・・・・。それは失礼致した」
女性は、殺気を消し、地面に突き刺さった鉈を手に取る。
「しかし、その若君が何故ここへ?」
「あっちの道場に向かってたんだけど、こっちから良い香りがしたからつい。とても良い庭だな」
疾風の言葉に女性は、警戒をとき微笑む。
「ああ、この先は御当主一家が眠る墓地がある。それにちぃ姫様はお花がお好きだったので一年中何かしらの花が咲くように世話をしている」
「そうなんだ。あの貴方は?」
「これは失礼した。私の名は、葵。ちぃ姫様の付き人の任に着いていた。姫様亡き後は、墓守をしている」
(華音のことだよな。やっぱり亡くなっているのか?)
葵の言葉や態度を見るとそう思えてくる。
「疾風殿。そちらの方は?」
「あ、こっちは薫。宝剣の精」
疾風の言葉を聞き、葵は膝を付き頭を下げる。
「これは、失礼致しました。貴方様がお怒りになるのは当然です、しかしここは我らにとっては聖域とい言ってもよい場所。どうぞ、ご容赦を」
「別に構わん。勝手に足を踏み入れた我らにも非はある」
「ありがとうございます」
「もういいからさ、立ってくれよ、な?」
疾風は、葵に手を差し伸べる。葵は、その手をとり立ち上がった。
「それにしても青嵐の方が何故このような場所に?」
「任務で調べたいことがあるんだ。それと焔の宝剣について椿さんから頼まれごとがある・・・・・・」
疾風から椿という名が出ると先ほどおさまったはずの殺気が再び立ち上る。
「あの裏切り者に何を頼まれたかは知りませんが、あの女にはお気を許さぬように」
「ほぉ、随分と警戒しているようだな」
「当然です。ご当主亡き後、勝手に一族にトップになった家の者です。それも光輝の力を借りて。十年前のこととて・・・・・」
「疾風殿、薫殿?・・・・・・・・葵」
葵は、椿の姿を見るなり舌打ちをしてその場を立ち去って行く。
「待て!小姫の墓参りをさせてもらえないか?」
薫の言葉に葵は立ち止まり答えた。
「お二方なら構いません。用事が済んだらまたこられるといい。椿!お前は駄目だ」
「・・・・・・・・分っているわ」
「失礼する」
そう言うと葵は、姿を消した。
「さぁ、お二人ともこちらへどうぞ」
椿は、何もなかったように二人を道場へと案内した。
付き人=世話係兼身辺警護みたいな仕事です。
本来なら疾風達にもいるはずなんですが、独り立ちした彼等からは今は離れているという感じです。