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第38話:戸惑い

 部屋に帰るとあまりの殺風景さに雪に目玉をくらい、数日中に家具やらを買出しに行くことになった。

 とりあず、雪は寝床だけ整えると疲れていたのか早々に自室に入っていた。

 時計は、真夜中を示している。

 疾風は、凛の言った言葉が頭の中でぐるぐると回り続け眠るどころではなかった。

 頭を冷やす為にベランダへと出て、手すりに腕を置き自分の顔をその上にのせる。

 「疾風はどうするか」

 物心つく頃から今まで、疾風は青嵐の一族を守り、扉を守ることだけを考えて生きるように教育されてきた。

 他の一族を切り捨てる。その言葉は、疾風の心にかなりの重石となりのしかかる。

 確かに切り捨てられてきた、焔や闇珠にそう言われると否定出来ない。

 いつの頃からか、一族は権力や金に執着するようになってきていた。

 それは確かだ。青嵐とて一般社会での立場を築くことには力を注いできた。でも、それは、扉を守る為にはある程度の権力は必須なのだ。

 (あーーーーー、分らん。どう答えを出せばいいんだよ)

 跡取りとは言え、扉の守護の任についたばかりのひよっこである疾風には難しい問題だ。

 「どうした、眠れないのか?」

 「薫」

 いつの間にか自分の隣に現れた薫をチラッと横目で見ると再び大きな溜息をつく。

 「らしくないぞ、疾風。お前達、青嵐の人間は何ものにも囚われない自由意志を持ち生きるが家訓だろう」

 「そうだけどさ、それって自分達が守れればそれ以外はどうでもいいとも言えないか?」

 「そうではないだろう。人によっては自らの意志で一族の決まりを破り他の一族に力を貸す者もいた。何に価値を見出すかだと思うが。お前はどうなんだ?」

 「分んなくなった。俺は物心ついた時から、一族を守り導くことを第一に教育されてきたし、そうありたいと思った。けど・・・・・」

 「けど?」

 薫は、優しく続きを促す。

 「凛のあの目を見たらそれだけでいいのかって。凛のあの悲しい目を見たら、何か違うような気がしてきた」

 「お前はまだ若い。これから様々な物や人、それぞれの思いや立場の違いなどを目にし触れていくだろう。それによってお前の考えが変わっていくのは当然のことだ。よく考えてその時の自分の思いに忠実に生きれば、道は作られる」

 「でも、その選択によって一族が危険な立場になってしまったら」

 「だから、迷ったら俺や仲間に相談すればいい。何もかも一人で背負い込むことはないのだから」

 「・・・・・・・・・分った」

 薫の言葉は、疾風の心を救い上げる。

 「とりあえず、凛からの難問に答える為にも色々と調べなくては。あの頭領や椿の考え、そして華音の行方を含めて謎が多いからな」

 「ああ」

 「さぁ、もう寝ろ」

 薫は、疾風を中へ戻るように促し、疾風が自室に戻り眠りについたのを確認すると一人姿を消した。


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