第37話:難問
「ああ、その方なら・・・・・・・」
「知ってるのか!!晶」
答えが友人から返ってくるのには驚いたがそんなことはどうでもいい。
「君も知っています。この間、涯達から聞いたでしょう。焔の小姫殿の名がたしか華音と。そうでしたよね?」
「ああそうだ。それでどうして今その名が出てくるんだ?疾風、お前は何をしてきた、雪の荷物を取ってきたんじゃないのか?」
薫の言葉に疾風は頷く。でも、心ここにあらずという感じで聞いているのかいないのか分らない。
「疾風。とにかく私達にも分るように始めから話して?」
雪は、疾風の手に自分の手を重ねる。
「凛に会った」
「ああ、疾風が追っていた少女ですね?その少女と華音殿がどうつながるんです?」
「俺は自分の一族の安寧だけを望むのか、それとも腐敗した一族を切り捨てその腐敗した一族に巻き込まれた一族をも切り捨てるのかって」
疾風の言葉に一同は言葉を失う。
「腐敗した一族とは光輝ですね。それに巻き込まれたとなると焔ですか」
「あと、どうして自分達のことばかり考えるのか。世界の軋む音とそれを止めようとしている者達の嘆きの声。それを見ていることしか出来ない華音の悲しみに気付いてないって」
「じゃあ、小姫は生きているのか。それなら納得がいく」
「涯?」
晶は自分の精霊を見る。
「言っていただろう?時枝の娘が。当主の呼びかけに答えないと」
「ああ。多分、依り代を変えたな。小姫の側にいて守る為に」
精霊達の言葉に雪は、疑問を唱える。
「依り代を変えるって、そんなことが可能なんですか?」
「可能だ。何故なら、我々はあの宝剣が人身を取るのに必要というわけではない。主から生まれ出る気が必要なのだ」
「そう、俺にとっては疾風から生まれる風の気が。涯にとっては晶の地の気がな。だからこそ契約が出来る者はかぎられるのだ」
雪は疑問が解消されたのか満足そうだ。
「そんなことを知っている凛という少女は何者何でしょうか?」
「・・・・・・・・・いた」
「はい?」
疾風の呟きが聞こえなかった晶は再度尋ねる。
「闇精がいた。そして凛はその力を使ってた」
「どういうことだ?疾風。混乱しているだろうが見たままを話せ」
薫は、疾風の頭を軽く撫でる。
「凛が何も無い空間に手を伸ばした。そしたら、いつの間にか闇の空間が出来てた。そしてその中から腕が伸びて、凛を抱き上げてそれで消えた」
「その腕は、男か女か?」
「えっと、細かったから女だと思う」
その答えを聞き、薫と涯は何か閃いたのか互いを見つめ頷き合う。
「ならば、その腕の持ち主は、闇樹。闇珠の一族の宝剣に宿りし精霊。華炎と闇珠は、女同士で親友だ。小姫の安否を知っていてもおかしくない」
「で、それだけか言われたのは?」
「今度会うときに答えを聞くと。それによって自分達は道を選択するって」
「・・・・・・・・また、難しい質問を投げかけて去ってくお嬢さんだな」
薫は、頭をかきながら宙を見つめる。
「だから椿殿には、話さなかったんですね?」
「ああ」
「賢明な判断です。成長しましたね」
「晶君!確かに疾風は、どこか抜けているけど一応跡取り教育は受けてるわ」
ベタッ!
疾風は、ソファーに突っ伏す。
「はははっ。そっ、それはフォローになっていないぞ」
薫は、腹を抱えて笑い出す。
周りを見ると涯も晶も笑っている。
「そぉ?」
雪は、首を傾げて不思議そうにしている。
この雪の発言のおかげで場の空気が和んだ。
そしてこのままではらちがあかないので明日から行動に移すことにして、ひとまず解散したのだった。