第32話:連行
「それでは、本部までご同行願います。それと逃亡をお考えなら、即逮捕させていただきます。こちらへどうぞ」
沙紀に促され三人は、連れ立って歩く。雪を真中に挟んだ形で。
「警察にしては若いよな・・・・・・・」
「そうね、あまり私達と年齢は変わらない気がする」
薫は、前方を歩く沙紀を注意深く見つめながら歩く。
「沙紀さん!!」
大通りまで出ると一台の黒い車が止まっていてそこには背の高い青年が立っていた。
「タロ、この三人を連れて本部に戻るわよ」
タロと呼ばれた青年は不思議そうに疾風達を見つめ、沙紀に確認をとる。
「この子達ですか?二人はまだ子供じゃないですか」
「子供だろうと特異能力者よ。現場検証は、彼らに任せるわ。とりあえず、犯人は・・・・」
ドーン!!
先ほどまでいた場所から爆音と共に爆風が吹き荒れる。
疾風は雪を、薫はその二人を守るように覆い被さる。そして青年は沙紀に覆い被さった。
爆風が止むと先ほどの行き止まりから叫び声と中の無事を確かめようとするこちらの人間の怒号が響く。
「タロ!!この三人を連れて後方に待機!私は現場へ行く」
そう言うと沙紀は、走って行く。その間も他の警官へと指示を出しながら。
「皆さん、車に乗ってください」
青年は、疾風達を車へと押し込むとダッシュで運転席へ回り急いで発車させる。
「いいのか?あのお嬢さんは?」
運転席の青年はミラーで現場を見ながら、真面目な顔で断言する。
「大丈夫です。沙紀さんは特異課で一番の能力者です。沙紀さんが駄目なら他の誰も事件を解決することは不可能です」
その言葉に疾風は、驚く。そしてそこまで言い切るだけの強さとは一体どんなものなのだろうかと思うのだった。