第27話:弱音
ピンポーン。
「・・・・・・・・・はいはい」
疾風は玄関へと向かいドアを開ける。と、そこには心配げな顔をした晶の姿あった。
「どうかしたか?そんな顔して」
「どうかしたかじゃありません!!邪気に当てられたというのは本当ですか!!」
「ああ、でももう大丈夫だぜ?まぁ、入れよ」
晶を部屋の中へと招き入れる。
「・・・・・・・・・・見事に何もないですね」
「自分の部屋には一応、ベッドや机、本棚、タンスはあるぞ?」
「そっ、そうですか」
「まぁ、座れよ」
疾風はリビングの中央に置いたテーブルへと案内し、晶の分の座布団を置く。台所へと向かった疾風の後姿を見て、いつもの疾風ではないと思った。
(これは・・・・・・・かなり落ち込んでますね)
「水しかないんだ。悪いな」
「いいえ、かまいません。それで、邪気に襲われたというのは・・・・・」
「いや、そんな大事にするなよ?薫が言うには、俺がいた場所の近辺にいた邪の残り香が寄ってきたんだと」
「十分、大事です。まぁ、無事なようで安心しましたけど」
「でも・・・・・・・」
「でも?」
疾風は、話そうか迷ったが結局話すことにした。幼馴染である晶になら話してもいいだろう。
「正直、邪気が寄ってきたとき何も出来なかった。体にすごい不快感があってさ、あんなに里では修行したのに。情けないよな」
疾風の弱気な笑顔に晶は、始めは何と声をかければいいか分らなかった。ただ単に励ましの言葉をかけるのは、疾風のプライドを傷つけるような気がした。だから、慎重に言葉を選ぶ。
「それは、僕にも言えることです。きっと同じような状況におちいれば、疾風と同じ結果だったと言えるでしょう。確かに修行はしましたが、それは実戦ではありません。きっと僕らの先輩方も同じような経験をして今の姿があると言えます。僕達はスタートラインに立っただけでしかない。これからどんな道を歩めるか、それはこれからの努力がものを言うのです。だから、お互い頑張りましょう」
「・・・・・・・そうだな。何か晶に話したらすっきりした。弱音なんて俺らしくないよな?」
「そうです。その調子です」
やっといつもの疾風の明るい笑顔が戻ったのを見て、晶はホッとした。
自分もかなり疾風の雰囲気に飲まれていたと晶は思う。自分も覚悟が必要だと再認識した。
その後は、他愛もない話をして過ごしていたが、ふと目線をずらすと床に紙が散らばっているのに晶は気付く。
「何です?その紙」
「母さんからの手紙。ああ、嫌なこと思いださせやがって」
「すみません。でも、たかが手紙でしょう?」
「じゃあ、読んでみろよ」
「いいんですか?」
疾風が大きく頷いたので晶は散らばっている手紙に手を伸ばす。そして黙読すると苦笑いを浮かべた。
「たっ、確かにこれは・・・・・・」
「なぁ?俺にどうしろってんだよな?」
「雪が東京にですか・・・・・・。これは別の意味でこちらに来ている一族の者達に波乱を呼びそうですね・・・・・・・」
「俺らだってもう15だぜ?恋の一つや二つするだろう?それを阻止しろってのは、どうよ?ただでさえ、里に居た時も雪から苦情が来てたのに」
「でも、他の一族の男は迂闊に手を出したりはしないでしょう、青嵐の奥方の恐ろしさは身に染みて分っているでしょうから。しかし、頭領殿はどうでしょう・・・・・。雪をこちらに呼ぶと言っている時点で何かしらの含みはあるでしょうから」
「そーだよなー。ああ・・・・・・・・誰かどうにかしてくれよ・・・・・・・」