第26話:母からの手紙
食事を済ませ休憩をしていた時、三枝さんから渡された手紙の存在を思いだした疾風は、封を開け手紙を取り出す。
それは、母からの手紙で疾風を心配して寄越したものだった。前半は。
疾風、元気にしていますか?あなたのことだからマイペースに生活しているだろうと思っています。
この間、晶君のお母さんに会い、そちらの部屋について聞きました。予想外の大きさとのこと、疾風は物は必要最低限でいいと言ってましたがそうもいかないでしょう。
銀行口座に多めに振り込んでおきましたからそちらで買い揃えなさい。
それとこれはまだ本決まりではないのですが、雪が聖殿の御付きにという話が出ています。お父様が断固反対しておりますが、当主会は、聖殿の意思を通すつもりです。
なので、もし、雪がそちらに行くことになったら兄である貴方が断固守り通しなさい。
いいですか、邪の危険からはもちろんですが、聖殿の手からも守り通すのですよ。
あの子は、本家の娘でまだ嫁ぎ先も本決まりではないのですからね。
お父様も私もあの子は一族の者に嫁がせると決めているのです。
二人で仲良く過ごしなさい、そしてこれまでと同じように貴方達双子には誰も入り込めないと思わせるのです。
それでは、体に気をつけてたまには帰ってらっしゃい。
母より。
手紙を読み終えた疾風からは、はーーーーーという重い溜息が出る。
(とっ、東京に来てまであの生活をしろって言うのかよ・・・・・)
疾風は、手紙を床に投げ捨てるとそのまま後ろに倒れこむ。
母からの手紙の通りなら近い内に雪が来るというのは確定事項だろう。ということは、母の言いつけ通りにしなくてはならないだろう。
一応、中学を卒業し村から出て自立した男としては、母親の言うことをはいと素直に聞くのはどうかと他人なら言うかもしれない。
しかし、藤堂家の人間にとって母の命は絶対。父でさえ、逆らえないのだ。だから、疾風が逆らえなくても仕方ないだろう。
(ああ、気がめいるぜ)
藤堂家の裏ボス?からの手紙でした。
さぁ、母からの命を守るのか破るのか、まぁ守るでしょう。
己の身が大事なら。