第23話:闇を纏う少女
真夜中の公園で一人の少女がたたずんでいた。
誰かを待っているようでもなくただ公園の中心に立っている。
それにしてもおかしなことだった。何故なら、今の時間はちょうど日付が変わった時間、真夜中だからだ。
「・・・・・・・・そう。彼らが動き出したの、精霊達も一緒なの」
少女は一人、何事か呟いているようだ。
誰もいない場所で呟き続ける少女は、周囲から見れば奇異な光景として映っただろう。しかし、公園の周囲には不自然な程に人の気配がないのだ。
「ありがとう。くれぐれも彼らに見つからないようにね」
そう言うと少女は、公園を後にしようと出口へと向かう。
その時、反対側から光が射す。
その光の正体は懐中電灯だった。
「君!こんな真夜中に何をしているんだい?」
少女に声をかけたのは制服に身を包んだ中年の警官だ。この近くの交番に勤める彼は、近所の見回りをしていたのだ。
「どうしたんだい?」
「・・・・・・・あなた、もしかして」
「?」
少女の言葉に警官は首を傾げる。
「こんな時間に出歩くのは危ない。おじさんが送ってあげるよ」
「あなた、もうあそこには近づいては駄目。あなたの能力ではもうあそこを静めることは不可能」
「あそこ?」
「この世の初めの炎が宿りし所」
「!?・・・・・・・君は一体・・・・・」
「忠告はしたから。・・・・・・・・どうか華音を悲しませるようなことはしないで」
少女の言葉の内容に愕然とし、警官は混乱におちいった。その隙に少女は手の平に集め出す。闇の力を。
そして少女を覆うように闇が広がり、少女を包み込むと霧散した。
結果、その場にはまだ混乱している警官一人が取り残されたのだった。