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第20話:会合

 ―――――十数年前のある春の夜、精霊達の住む異界にて。

 ヒュ―、ガシャン!!

 成人男性の拳よりも二まわりは大きい、炎弾がかなりの勢いで土下座した男の顔の真横に落ちる。

 「ふざけるのもいいかげんにおし!!きさまの一族の腐敗を我らの小姫にぶつけるとはいい度胸だ。我が骨の一欠けらも残らぬように焼き払ってくれる」

 「申し訳ない。このような事が二度と起こらぬように私と当主で計らう故、許せとは言わないが堪えてもらえないだろうか」

 「華炎かえん。落ち着けよ、確かに今回の事件は許しがたいことだ。だが、本家を失うことは出来んだろう」

 「おだまり!!薫。お前は、あのような卑怯な輩の肩を持つのかえ?」

 「いや、持つ気はないさ。宝剣の主、それもまだ1歳になったばかりの赤子を手にかけようとするような奴なんかな」

 「だったら、黙っておれ。我は、あのような腐った一族を放置するなど我慢できぬ。いつまた我らの大切な小姫に手を出すか分らぬからな」

 「それは、分る。だが、一族全ての人間を焼き払うと言うのはどうだろう?」

 「では聞くぞ、涯。もし、お前が主に出会ってその主の命を狙う不届きものがおったらどうする?」

 「・・・・・・・・・・始末する」

 「ほれみたことか。我と何の変わりがある?」

 「涯。お前は黙っとけ!!」

 華炎の迫力に押され、ついポロッと本音を言ってしまった涯を薫はしかりつける。

 「だから、首謀者達は当主と光炎こうえんが責任を持って処断すると言ってるだろ?」

 「それではトカゲの尻尾切りと一緒だろう?だから華炎は大元を叩くと言っているんだ」

 「炎輝えんき!!だからって光輝の一族全部始末したら扉の守護の任に支障をきたすだろうが!たまに発言したかと思えば、それは何だ!!大体こういう時は、相方のお前が華炎を止める役だろう」

 薫の言葉に炎輝は、殺気を含んだ笑顔を向ける。

 「主に手を出されたのは俺も一緒だ。一緒にそいつらを始末こそすれ何故かばわねばならん」

 「うう」

 「ではこうしたらいかがですか?」

 「何だよ、ながれ

 それまで黙っていた青年が口をはさむ。

 「本家だけ残して後は始末すればいいのでは?それなら二人の気も多少は晴れるでしょう」

 「アホか!!そんなことしたら数十年後には滅びるわ!!」

 「大体、さっきから薫は何故光炎の肩を持つのですか?」

 「お前らが止めないからだろが」

 薫は、ついに切れ始めた。

 「華炎。ならば約束する、この先光輝の一族が姫に何かしたならば例え何が原因であっても私は自分の主と契約は結ばない」

 光炎の思いがけない言葉に華炎は、少し怒りを納める。

 「おい!光炎、お前正気か?」

 「ああ。それだけのことを我らはしたのだから」

 「いいだろう。その約束忘れるでないぞ。しかし、いくらなんでもそれはお前にばかり責を負わすようで心が痛む。その約束は、小姫が成人するまでとしておこう」

 「分った。感謝する」

 「感謝されては困る。今から我はもっと酷い事をお前に課す気だからな」

 「何を望む?」

 「先ほどの約束の証としてお主の片目をいただく」

 「おい!華炎それはいくらなんでもひどいぞ!!」

 「薫。いいのだ、それぐらいせねば信用などしてもらえまい」

 そう言うなり光炎は、懐から短刀を取り出し、自分の左眼に突き刺す。

 「うっ・・・・・・・・・」

 あまりの激痛に光炎は、うめく。が、うめき声を上げるだけで暴れたりはしなかった。

 その姿を見た華炎は、にっこりと笑う。

 「これで誓約はなった。では・・・・・・・我らは失礼する」

 そう言うと炎輝と共にその場を立ち去って行った。

 「決着はついたようですね。それでは私も失礼します」

 同じように流も姿を消す。

 「これを使え」

 涯は、止血の為に布を差し出す。

 「すまない。二人にも迷惑をかけた」

 「いいや、でもこれっきりにしてくれよ。あの状態の華炎に意見できるのはあいつの主と闇樹だけだからな」

 「ああ。そう願うよ。炎の女王を敵に回すのは私もこれきりにしたい」

 「そうだな。あの女王様に逆らえる男はいやしないって・・・・・・」

 先ほどまで華炎がいた場所を見て薫は、本音をもらす。

 しかし、その誓約が数年後に破られるなどこの時は誰も考えてもみなかった。


怒り狂った女性を止める役目を勇気を振り絞り実行した薫でした。

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