第18話:勉強会
「なー、ここって無駄に広いと思わないか?」
「そうですか?とりあえず、個室が二つあるのは涯達の分も入れてのことだと思いますよ?」
「そうなの?だって、薫達の住処はここじゃないだろ?」
「疾風、俺達の役目には主の守護もあるんだが・・・・・・・」
「へー、でもいつもこっちに居る必要はないんじゃないか?」
「はーーーー。俺の主は何でこうものんきに育ったかのかねぇ・・・・・・」
薫は、ガシガシと疾風の頭をかき回す。
「仕方ないですよ。疾風達の里は山の中ですし、青嵐の一族の方はその気質がらあまり表の権力闘争だとかには興味は惹かれませんし。そんな時間があったら放浪の旅に出てしまいます」
「昔も今も変わらんということか・・・・・・・」
薫は、疾風を見て再度溜息をつく。
「なっ、何だよ。お前ら・・・・・・・」
「天牙衆に入るってことはその権力闘争にも時には介入せにゃならんし、介入するってことは命の危険にもつながるんだ」
薫の言葉には、涯は深く頷く。
「あのね、疾風。君は知らないと思うけど、当主会の前代表である光輝の一族の当主夫妻が亡くなってからの一族は権力争いで各一族同士が足の引っ張り合いをしているんです。まぁ、光輝の一族同士がってのが正しいですけど。他の一族は当主が強く手綱を締めていますから」
薫と晶の真面目な話に、疾風は首をかしげる。
「光輝の一族同士が争ってるんだろ?俺ら関係なくねぇ?」
「はーやーてー。あのね、彼らは今まで通り自分達の一族が一番ってことをしらしめたいんです。だけど、他の一族のように結束力もなければ力もない。そんな状況で各一族には宝剣の主が現れた。他の一族が力を増すのを黙って見てると思いますか?」
さすがにここまで言われたら疾風にも晶達の言いたいことが分ってくる。
「一番簡単な方法が俺らを消すってこと?」
疾風の言葉に残りの三人はそろって頷いた。
「光輝の一族にも宝剣あるんだろ?」
「そう、そして契約を結んでいたのは彼一人だった。だけど、最近になってあいついで契約を交わした者が現れた。それによりパワーバランスが崩れたんです」
「いや、契約を交わしていたのは、一人じゃない。焔の一族のお姫様が先だ。知らなかったのか?お前達・・・・・・」
「・・・・・・・・そう。生まれたと同時に契約を交わした」
薫と涯の言葉に疾風達は驚く。
「だけど、焔の一族って確か・・・・・・」
「うん。そう・・・・・・、そういうことなら十年前の事件についても納得がいくかな」
二人の言葉に精霊達は、意味が分らないという顔をしている。
そんな二人に、晶は話し始める。十年前に起こった事件を・・・・・・。
「焔の一族の本家・天見家は、全員残らず処刑されました」