第16話:新居
疾風は、警官や凛に教えてもらった通り目的の建物に着くことが出来た。
外見はごく普通のマンションだった。エントランスに入ると管理人室がある。
「あのー」
「はい?」
中にいたのは、60代ぐらいの初老の男性だった。
「藤堂と言いますが・・・・・・・」
「ああ、聞いております。私は、光輝の一族の御当主よりこちらの管理を任されております、三枝と申します」
「どうも。あの俺の部屋ってどこになるんでしょうか?」
「7階のフロアが藤堂様のお部屋になります」
「フロア?まるまる一階分が俺の部屋?」
「はい。6階が桂木様のお部屋で、2階が皆様の仕事場になります」
「そうですか・・・・・・・」
頭がくらくらしてくる。何を考えているんだあの当主は・・・・・・・。
「藤堂様のお荷物は部屋の方に運んでありますので。こちらが鍵になります」
「どうも」
疾風は、とりあえず自分の部屋だという7階へ向かった。
エレベーターに乗り込み、7階まで行く。そしてドアが開くと目の前には玄関らしき扉がある。
貰った鍵で中へ入ると正直溜息しか出なかった。
「だから・・・・・・一人で住むのにこんなでかい部屋はいらんわ」
玄関から真っ直ぐ伸びる廊下のドアを開けるとだだっぴろいリビングが広がっている。
リビングだけで実家にある自分の部屋以上の広さだ。
疾風は、最低限の必要なものしか送らなかったので部屋には何も無い。
家具などは追々そろえていくしかないだろう。というか何を置けというんだ、何を。
「晶のとこ行こう」
疾風は下の階におり、インターホンを押す。
するとガチャリと扉が開き、中から見知らぬ男性が出て来る。
出てきたのは、自分より背の高い浅黒い肌で短髪の男だった。
「・・・・・・・誰だ?」
「・・・・・・・・・・・・」
男は答えず、疾風を見つめている。その状態が30秒ぐらい続いて中から見知った声が聞こえてくる。
「誰だった?何だ、疾風じゃないか」
「晶・・・・・・・。誰?この人・・・・・・・・」
晶が寄って来ても何も反応しない男に思わず疾風は思ってしまう。
(・・・・・・・・大丈夫か、この男。起きてるのか?)