第11話:かけひき
「晶?久しぶりだなー、元気かよ」
「うん。疾風も元気そうでよかったよ」
桂木 晶は、疾風と同い年で背は疾風と同じくらいで髪は薄茶色。そしてノンフレームの眼鏡をかけた知的な雰囲気の少年である。
疾風は、意外な人物と意外な場所での再会に盛り上がる。
「ゴホン!!」
部屋の奥から咳払いが聞こえる、咳払いをしたのは疾風の父親だった。心なしか額に青筋が浮かんでいる気がする。
(やべーーーーーっ。)
疾風は、急いで奥へと向き直り姿勢を正す。その様子を見ていた他の幹部から失笑がもれる。
「桂木 晶、藤堂 疾風。君達に当主会からの命を伝える。両名は、本日付で天牙衆への配属が決まった」
「天牙衆?」
耳慣れぬ言葉に二人は疑問の声を上げる。
「天牙衆とは、各一族の宝剣の主が任につき、一族の命題である天の扉の守護及び邪の排除を行う。天牙衆の下には各軍が付き従う」
「あの、いいですか?」
晶は、当主会の面々に質問の許可を求めた。
「何だ?」
「宝剣の主が任につくとおっしゃいましたが、僕の父や祖父はそのような任にはついていませんでしたが?」
「この任は宝剣と真に契約をした者がつく。ここ百年程、契約を行える者がいない為、天牙衆は消滅していた。しかし、この数年の間に次々と契約を行った者が出たため復活となった。そして天牙衆の頭領は光輝の一族の当主が務める。君達は東京へと向かい彼の命に従いその任を真っ当したまえ」
当主会の幹部(多分、光輝の一族であろう)の発言を受け、晶の目が光ったのが見て取れた。そして疾風がまずいと思い止めようとした直後、晶はニヤリと笑うと発言した幹部に心底楽しそうに爆弾を落とす。
「命に従えですか?あなた方光輝の一族の人間は一体自分達を何様と思っていらっしゃるんですか?」
「何だと?」
晶の発言にその場にいた幹部達は色めき立つ。といっても騒いでいるのは光輝の一族の者たちだが。
「そもそも当主会というものは、扉を守るという任を行う上でバラバラでは迅速に対応出来ないということで出来たものです。つまりあくまでまとめ役に過ぎません。そして僕はまがりになりも地涯の一族の次期当主です。つまり、あなた方の当主とは同列の立場です。それなのに命に従えとはどういうことですか」
(さすが、晶。幹部連中の前でもいつも通りだ)
疾風は、晶を横目で見ながら、他の一族の者達の様子をさぐる。自分の父の隣に座る晶の父のその顔には、当然だよく言ったと言わんばかりの顔が浮かんでいる。そして、水鏡の一族の当主の顔にも。
その為、誰もこの争いを止める気はなさそうだ。
そして自分の父親を見るとその目はそろそろ収拾をつけろと言っている。
疾風は仕方なく睨み合いをしている晶と幹部の間に割って入る。
「あの・・・・・・」
「何だ!」
晶に対しての苛立ちを自分に返され、何で自分がと疾風はげんなりする。
その時、奥から再び咳払いが聞こえる。その咳払いにその幹部はひきつり先ほどより幾分か態度を和らげてくる。
「何だね?」
(親父、ナイスアシスト!!)
「つまり天牙衆の頭領は、この幹部会の存在意義と同じくまとめ役。我々は、その頭領に対しただ従うのではなく意見をし、時にはその命にも従わない権利は戴けるんですよね?」
「当然ですよね?我々は次期当主なんですから」
「・・・・・・・・・・それは・・・・・・・・・」
疾風と晶の言葉に幹部の答えはつまる。その時だった、奥の扉から一人の青年と女性が入ってきたのは。
「もちろんだ。君達は各一族の跡取。そのような立場の人間を自分の下につく己の一族の人間と同列に扱うなど私は愚かではないし、ただ上からの命に従うしか能のない人間ではないだろう?君達は」
基本的に跡取として育てられた彼らのプライドは高いです。そして誰かの下について働くなんて考えません。
疾風が例外かもしれませんが。