1.2
音がした方を振り向くと、ホーム下の線路に制服を着た女の子が倒れていた。
一体何が起こったのか、状況が飲み込めない。周囲がざわついている。
なぜあんなところに人が?自殺?事故?
「おいなにしてる!!ホームに上がれ!!」
私の隣に並んでいたスーツ姿の男が、彼女に向かって大声で叫んだ。しかし、彼女は微動だにしない。
彼女の頭から血が流れていた、どうやら地面に頭を打って意識を失ってしまったらしい。
転落に気付いた駅員が非常ベルのボタンを押した。ホームに異常事態を知らせる音がけたたましくなり響く。
私はホームに立ち尽くして、彼女の背中をじっと見つめた。全く身動きがとれない、女の子を助けたいという気持ちもあったが、巻き込まれて自分が死ぬのが怖かった。
そのとき、先ほどのスーツ姿の男と近くにいた学生服の少年がホームに飛び降りた。
私は目を離すことができなかった。
「あげろ!!体を持ち上げるんだ!!」
スーツ姿の男が大声で叫ぶ、その声には焦りの色が混じっているのがわかる。
しかし、ホームの高さは二人の身長より少し低いくらいであり、女の子をうまくホームに上げることができない。
「下のスペース!!下のスペースに非難してください!!」
電車待ちの列の誰かが叫んだ。スーツ姿の男がそれに気付き、スペースを探すが、生憎この駅には非難スペースは設置されていない。
『まもなく電車が参ります、黄色い線までお下がりになってお待ちください』
至って冷静な、機械的な声のアナウンスが流れる。
「お客様!!戻ってください!!」
駅員がホームに下りた二人にむかって言った、女の子を諦めろと言う意味だろう。非情なことかもしれないが、私には最善なことに思えた。
一瞬迷ったそぶりを見せたが、二人は急いでホームの端に手を掛け上り始める。
しかし、体力を使ってしまったせいかなかなか上ることができない。上半身まで上がったところで落ちてしまう。
「つかまって、早く上がってください」
私は思わず手を出していた、さっきまで動かなかった体が嘘のように動く、不思議と恐怖もなくなかった。それを見た駅員や周囲の人も手を貸し始める。
電車がホームに突入し、急ブレーキの耳障りな金切り声が鳴り響いた。




