1.1
駅のホームから東の空を見ると、ちょうど太陽が沈んでいく様子が見える。その様子を見ながら、音無は今日も一日が無事終ったという安堵と、また明日がやってくるという酷く憂鬱な衝動に駆られた。
明日こそ自分をうまく出せるだろうか、私が実は面白くて楽しい人間だとわかってもらえるだろうか。
4月から高校生になり、6ヶ月が過ぎた。
クラスでは、いくつものグループが形成され、一人一人に役が与えられていた。リーダー、不良、優等生、容姿端麗なもの、オタク。それぞれのグループで、それぞれが演じる役の中で、みなそれなりに学校生活を楽しんでいた。
しかし、私は違った、私には属するグループも演じる役も無かった。
電車が到着するまであと3分、停止線の前に立ち、線路をボーっと見つめる。私はホームを見ながら夢想する。
もしホームに落ちて、電車に轢かれてしまったら?
死ぬのはわかってる。私の体はバラバラの死体になり、無残な姿になるだろう。でも、精神的には解放されるんじゃないか、うまくいけば幽霊になって世界を飛びまわれるかもしれない。人の生活を好き勝手覗き見ることができるかもしれない。
でも、私にはそんな勇気はない。幽霊になれる確証がないし、痛いのは嫌だった。
私はポケットからスマートフォンを取り出して、画面のロックを解除した。天気予報のアプリを起動したが、電波の調子が悪いのか、更新がうまくいかない。
ふっと私の横を何かが通り過ぎ、やわらかい風が吹いた。それと同時にどすんという鈍い音が聞こえた。




