表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

8016E列車 こうしてね

 それは2年生に冬であった。

「はぁ。ナガシィ。早く学校行こう。」

萌は僕の前に立って先に歩いている。

「別にいいじゃん。ゆっくり行ったって。」

「・・・ナガシィは寒いの平気なの。」

「・・・。」

別に平気ってわけじゃない。でも、僕には冬限定の楽しみがあるのだ。冬は吐く息が白くなる。当然このときの僕にはなんで吐く息が白くなるのかなんて、その理由は分かるはずがない。でも、息が白くなることによって、僕はエスエルができることを楽しんでいた。

「はぁ。」

と言って息を口から吐く。すると口が煙突の代わりになって白い息を吐き出すのだ。

「ナガシィ。何してるの。」

萌はそんなことどうでもいいと思っている。

「いいじゃん。別に。面白いんだってば。」

「面白いねぇ。ナガシィそんなこと面白いの。変なの。」

「・・・なっ。いいじゃん。別に。」

「早く行こう。」

「えっ。わっ。」

萌は後ろから僕のランドセルを押して、強引に前にすすめる。僕は前にあんまり早く進みたくないから、ちょっとだけ足踏みをする感じで踏ん張ろうとするけど・・・。進まないもんだね・・・。

 学校に着いた。教室まで萌と話して、席にランドセルを置く。手袋をとると、冬の寒さが手に伝わってくる。寒さで凍りつきそうになるぐらい寒い。手の指がどんどん冷たくなっていく。こうなると僕は手を首元にあてる。首元がなんで温かいのかは知らないけど、ここは温かい。ここに手を当てていれば、冷たくなった手もすぐに温まる。

「ふぅ・・・。」

一息つくと、その光景を見ていた萌が話しかけてきた。

「ナガシィ。何してるの。」

「えっ。ここに手を当ててるの。」

「見ればわかるよ。なんで手を当ててるの。」

「温かいもん。」

そう返すと、萌の冷たい手が首元にやってきた。

「ツメタッ。」

「そんなに冷たい。」

「うん・・・。」

「ちょっとナガシィ。手どけてよ。」

「えっ。」

そう聞き返すと、

「もう温まってるでしょ。」

と言った。確かに。もう僕の手は温まっている。手をどけると萌の冷たい手が首元にやってきた。ちょっとその冷たさに最初はビクッとした。

「ナガシィあったかい。まるでホッカイロみたい。」

「冷たいなぁ。萌の手。」

ちょっとその冷たさから逃げたくなる。

「ちょっと。ホッカイロは動かないよ。」

「えっ。」

「あっ。ふつうのホッカイロは動かないけど、このホッカイロは動くから、動くホッカイロかなぁ。」

「ちょ・・・ちょっと。僕をホッカイロ扱いしないで。」


 これが動くホッカイロと呼ばれるきっかけ。そのあとこのあだ名は磯部ぐらいにしか浸透しなかった。その結果が今である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ