ある平和の答え
世界を平和にしたい
始まりの願いはそれでした。
けれど弱いものにこの世界は厳しく、変化を成すためには力が不可欠でした。
強さを求めて長い長い旅に出ました。
旅の途中で、様々な人と出会いました。
重税に苦しむ農民、
税を上げざるを得ない領主、
品物を奪われた商人、
生きる道の無い盗賊、
森の進行を食い止める衛士、
森と共に生きる人々、
誰もが未来を嘆き、絶望の中で生きていました。
もっともっと強さを!
自分が強ければ、
変えられる力ぎあれば、
望みはやがて執念へと変質して行きました。
やがて一つの答えが見つかりました。
古き民の遺した暗号
行き着く先は魔物の国でした。
たくさんの魔物と出会い、話をして、ときに助けときに助けられ、仲間が増えて行きました。
けれど望みはついぞ忘れられることなくまとわり付きます。
毛むくじゃらの魔物が言いました。
お礼がしたい、君に力を貸そう
蜥蜴の様な魔物が言いました。
共に戦おう
見上げる程の大きな魔物が言いました。
我々は仲間だ
美しい魔物が言いました。
この命は貴方のものよ
数多の異形の魔物たちが言いました。
行こう!君のために
その日、世界の理を越え、遥か古の異形たちの声が響き渡りました。
大きな国と国との戦争はパタリと止み、
国の穀潰しは皆殺しとなって税は下がり、
盗賊は魔物との戦いに雇われ戦士となり、
森はその動きを止め、
世界は平和になりました。
けれど誰もが悲しい顔をしています。
魔王に与えられた平和など誰も感謝しないのです。
やがて勇者が立ちました。
絶望の中、何もしなかった英雄は、平和を守ろうとした魔物を殺して行きます。
ついに仲間は皆、物言わぬ骸となり、勇者と魔王は対面しました。
民の望む未来のために、
己の築きし平和のために、
魔物に殺された国王のために、
勇者に殺された仲間のために、
勇者と魔王は互いにぶつかり、勝敗はつきました。
魔王は崩れ、勇者は意気揚々と帰路に着きます。
その後、勇者を祀る国とその国の横暴に耐えかねた国々との戦争が始まり、魔王の築いた長い平穏は消滅しました。
また、次の魔王が平和を望むまで………
リメイク版を作成しました
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