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作者: けろりよん
掲載日:2012/04/17

ちょっとだけホラーです。

たいして怖いものではないですけどね。

情景を想像しながら読んでみてください。




 赤い傘を差している人がいた。

 今日は青天である。

 傘のせいで顔は見えないが、それは女性だ。

 黒いスカートを穿いている。


 傘を持った女性は、道の真ん中に立ったまま動かない。

 歩行者はまるで気付いていないかのように、傘の女性を素通りしていく。

 僕はしばらくその傘を見つめていた。


 もしかしたら肌の弱い人で、常に日傘が必要なのかもしれない。

 しかしそれならば、突っ立ったままというのが理解できない。

 室内にでも入れば良いだろうに。


 道に迷って困っているのかもしれない。

 それならば目の前に交番がある。尋ねれば済む話だ。

 どうやらこれも違っている。


 誰かと待ち合わせをしているのかもしれない。

 だとしたら相手は酷い人なのだろう。

 こんな青天の街中で、肌の弱い人をこんなにも待たせるなんて。


 彼此三十分は経っただろうか。

 傘は微動だにしない。

 さすがにおかしいと思った。


 僕は少しだけ女性に近づいた。

 女性まであと、三十メートル程だろうか、僕は立ち止まった。








 今まで通行人で見えなかったからだろう。

 僕は近付くまで気付かなかった。


 女性を中心に道が濡れていた。


 濡れた道は真っ黒に染まっていた。


 僕は若干の恐怖を感じた。


 よく見てみると、濡れているのは道だけではない。

 女性のスカートもぐっしょりと濡れている。




 そして僕は漸く気付いた。

 これはよくないものだ。




 女性は僕に気付いたのだろう。

 少しずつこちらに近づいてくる。


 何故か僕は動けなかった。


 赤い傘が僕の目の前に見える。

 僕の視界にはもう、それしか映っていない。






 この傘、壊れているんです。






 よく聞き取れたと思う程、それは小さな声だった。

 僕は赤い傘を凝視したが、どこが壊れているのかは分からなかった。






 分かりませんか?






 先ほどよりも更に小さな声で、女性は囁いた。

 そしてゆっくりと、女性は僕の手を掴んだ。


 痛い。


 なんだ、この手は。

 冷たい。冷たすぎる。

 痛みを感じる程に冷たい。


 女性はその指を、しっかりと僕の指に絡ませた。

 僕の体温が下がっていくのが分かる。

 既に手足は震え、口内から歯のぶつかり合う音が聞こえる。






 私も、寒いんです。

 この傘壊れているんです。

 だから、貴方も入りませんか?






 理解できなかった。

 この赤い傘は、一体何を言っているんだ。


 赤い傘がゆっくりと上に上がっていく。

 僕は女性の顔を見てはダメだと感じた。


 だから僕は強く目を閉じて、顔を上に背けた。






 僕の身体に生暖かいものが降りかかってくる。

 じっとりと僕の身体を濡らしていく。






 ほら、壊れている。






 僕は女性の声に目を開けてしまった。

 傘の内側が視界に広がった。


 そこには夥しい数の顔が、みっしりと詰まっていた。

 もう殆ど原型を留めていない物も少なくない。


 僕はその顔が零す涙を全身に受け止めながら、意識を失った。





 また壊れちゃった。





 そう聞こえた気がした。





 僕はゆっくりと目を開いた。

 何もかもがぼんやりとしている。


 眼下に女性の頭が見えた。

 女性の髪はぐっしょりと濡れている。


 僕はふと横を見た。

 男の人が泣いていた。

 その隣に女の人が泣いている。

 その隣にも、上にも、下にも。


 そうか、僕は傘になったのか。

 僕はとても悲しくなって、泣いた。


なんとなく書いてみたくなったので書きました。

特に何も考えずに、想像を言葉にした感じです。

誤字脱字は、見つけ次第訂正いたします。

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