若菜の想い
中学3年生の私は、今日も図書委員の仕事をこなす。
昔から本が好きな私はこれで中学校の3年間、毎年連続で図書委員をやっている。
おかげで図書室の本はほとんど読破させてもらった。
私の当番は毎週木曜日の昼休みと放課後。
担当はカウンターでカードにハンコを押したり、整理したり。
まぁそんな地味な仕事だが、これが案外楽しい。
ちなみに今は放課後。
あと10分くらいしたら閉館かな。
そんなことを考えていたら、1年生の女の子が私に本を差し出した。
「あの、これ借ります。」
「はい。期限守ってね。」
私はそう言い、カードにハンコを押す。
するとその女の子はちらりと私の顔を見て、すたすたとドアを開けて図書室を出て行った。
しばらくして、
「おい若菜〜。そこの机の上にある本持ってきてー」
もう一人の図書委員である、渉が言った。
渉も3年間連続で図書委員をやってきた私の良き相棒だ。
私は左から3番目の机の上にある推理小説を確認すると言った。
「うん、分かったーってか図書室でそんな大声出さないの!」
「へへっ。ワリィ。」
渉の姿は本棚で見えないが、きっと反省してる顔なんかしていないのだろう。
まったく。1年生の頃から何も変わってないんだから。
私はそうつぶやいて本を手にした。
「はい。どうぞ渉さま。」
私は本棚の前に立って本を並び替えている渉に本を渡した。
「サンキュ。あ。」
「なに?」
「ありがとう。」
「‥‥‥‥どういたしまして。」
私は急に改まって言われたことに戸惑いつつも、おどけたようにニコリと笑ってカウンターに戻った。
渉は顔も良いし、性格も優しいから、学年の中ではわりとモテる方だ。
だが、告白を一度もオッケーしたことはない。
「好きな人がいるから。」
それが渉の言い分だった。
誰だか、興味本位で少し気になる。
だけど渉はその話をすると口をとがらせて怒ってしまうから、あまり聞けない。
ほら、いつもは優しいけどマジギレすると怖い男子って、いるじゃん?
まぁ、私には関係ないんだけどね。
私は今までの人生の中で「恋」というものをしたことが無い。
一体それがどういうものなのか想像がつかないし。
男子の姿を見てトキメくことよりも、一人で本を読んでいる方が幸せだと思うのになぁ。
と、本気でそう思っている。




