ヒロイン覚醒!?ラスボス化も筋肉で更生させます
——王都・中心区、深夜。
「もう、何もいらない……全部壊して、私だけの物語にするの……!」
天空を裂いて黒い魔力が溢れ出す。闇に染まったヒロイン・リリィの瞳は、完全に正気を失っていた。
かつて乙女ゲームで“選ばれる運命”だったはずの彼女は、今や魔力の暴走によって街一つを吹き飛ばす“ラスボス”と化していた。
「王子様も……学園も……クラリスも……! 全部、奪われた!!」
魔物が次々と王城を襲撃。騎士団は壊滅状態。絶望が街を覆う中——
ドォン!
大地を踏み鳴らすような音と共に、クラリスが現れた。
全身を覆うのは、“ダンベル・アーマー”。鉄と筋肉の融合体。輝くプロテインの瓶が腰に装備されている。
「闇堕ち? なら私は光堕ちよ」
クラリスが地面を蹴ると、魔物たちが次々と粉砕されていく。パンチ一発、キック一蹴、筋肉一閃。
「魔法無効化? そんなもの関係ないわ。筋肉に効く魔法なんて、ないんだから!」
「クラリスゥゥゥゥ!!」
リリィが叫ぶ。黒い魔力の槍が無数に飛ぶ。が、クラリスはそれを……腕立て伏せで全回避。
「私の恋も! 夢も! 主人公の座も!! あんたが奪ったぁぁぁぁぁ!!」
「……違うわ、リリィ」
クラリスは一歩、一歩、魔力の嵐の中を進み出る。
「奪ったのは、王子じゃない。筋肉の尊厳よ」
「は……?」
バキン。
次の瞬間、クラリスのラリアットがリリィの顔面を直撃。美しく弧を描いてリリィが空を舞う。
しかし——その表情には、涙が浮かんでいた。
「うぅ……わ、私だって……筋肉欲しかったのにぃぃぃぃ!!」
クラリスはそっとリリィを抱きしめた。
「わかる。追い込みすぎるとつい周りが見えなくなるわよね……でも、筋肉は逃げない。裏切らない。育てれば、誰にでも応えてくれる」
「クラリスぅ……」
——世界を包む闇が晴れ、夜明けが訪れる。
エピローグ:筋肉は裏切らない。
「私はもう、悪役令嬢じゃない。ただの——筋肉令嬢よ」
クラリスはそう言って、新たに王都に開設したのは、王国初の**“筋トレ付き社交サロン”**だった。
貴族令嬢たちはティータイム前にベンチプレス、舞踏会前にはスクワット1000回が日課となる。
婚約破棄された王子も、筋肉に目覚めて入門。「俺はまだ、二頭筋が足りなかった……!」と復帰を誓う。
そしてリリィは、クラリスの道場で師範代として日々筋肉と向き合う。
最後にクラリスは、朝焼けの中、鉄のダンベルを空へ掲げてこう言った。
「筋肉は……世界を救う」
(完)