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いつか見た夢  作者: ほのぼの。
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仕事終わり。足は鉛のように重く、じんわりと広がる足裏の痛みが一歩ごとに響く。帰りの電車が来るまで、あと15分。駅のベンチに腰掛け、いつものようにスマホを開いた。


おすすめ欄には、漫画やコスメのレビュー、推し活の報告、楽しげな日常の断片が並んでいる。けれど、それだけじゃない。仕事の愚痴、誰かへの不満、運営への怒り――今日も様々な感情が画面の中に溢れていた。本来は自分とは無関係なはずの言葉が、霧のようにじわじわと染み込んでくる。気づけば、心がどんよりと沈んでいた。まるで乗り物酔いをした時のように、胸の奥がざわつく。


「今日はやめておこう」


スマホを閉じ、ポケットからイヤホンを取り出す。こんな時は嵐に限る。小学生の頃から聴き続けてきた彼らの音楽は、どんな時でも寄り添ってくれる相棒だ。


イントロが流れた瞬間、ふっと肩の力が抜ける。スマホの画面から目を離し、線路を見つめながら歌詞に耳をすませる。


「この場所、信じた道。ただ行こう。」


何度も聴いたはずの曲なのに、今日はその言葉が妙に心に引っかかった。


本当に、この道でよかったのか。この先も、続けていけるのか。


ずっと抱えていた不安が、音楽とともに胸の中でざわめく。でも、「ただ行こう」というシンプルな言葉が、迷いの中にいた私の背中をそっと押した。


その時、スマホが震える。画面を見ると、「今日もだべろー」の文字が浮かんでいた。


思わず、ふっと笑みがこぼれる。相変わらず、ゆるい言葉遣い。でも、その肩の力の抜けた感じが、なんだか心地いい。


社会人になってから、気を張る時間が増えた。突然鳴る電話が苦手で、取る直前はいつも身体がこわばる。お客様との会話では毎回のように噛んでしまうし、業務中は気の休まる暇もない。


お昼休憩も、資料を作りながらご飯をかきこむから、実質ほとんど取れていないようなものだ。想像はしていたけれど、社会人ってこんなに大変だったんだ――。バイトをして「社会」を知ったつもりになっていた数ヶ月前の自分を、今なら思い切りひっぱたいてやりたい。


だからこそ、この緩いメッセージが、今の私には救いだった。この適当さも、気の置けない友人との関係を表しているようで、なんだか気に入っている。


電車が来るアナウンスが流れ、ずしっとくる重さにふらつきながらリュックを背負う。この時間帯の車内は空いていて、今日は隣にリュックを置ける。ちょっとラッキー、なんて思いながらトーク画面を開き、「ええでー 今帰りの電車やから、お風呂上がったら電話かけるわ。寝んといてや 笑」と返すと、すぐに既読がついた。


「危ないかもしれん。頑張るわ 笑」「そこは頑張ってや。まぁその時はその時やな」「よろ」「へーい」


電車に揺られながら、少しずつ身体の力が抜けていく。家まであと少し。今日もなんとか、一日を乗り切った。

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