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私の奴隷はとても可愛い。〜XXXXX〜  作者: せろり
1章 ガール ミーツ ボーイ 〜そうして僕は彼女に出会った〜
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2


「…だから、可愛いくて側にいるだけで癒されるような人が欲しいんだよ!」

「お、おおう。落ち着け。悪かったよ」


 真っ赤になってもうやけくそで叫ぶと店主の方が落ち着いたらしくどうどう、と宥めてきた。おいこら私は猛獣か。


「でも意外だなあ。ドラゴンさんは確かにおっかねぇけど稼ぎあるしそれなりに美人だしモテるだろ?」

「…それなりは余計だ」

「ははは」

「それにお金目当てを側に置く程アホでは無いよ」


 Sランクの冒険者である私の稼ぎはいい。豪邸を一括で買えるくらいには金がある。それ目的なら好みの外見の男から声を掛けられた事はあるが、流石にそれは無い。

 元の世界でだってお金目当ての恋人なんて嫌だろう。


 それにこの世界は元の世界より治安が悪い。いくら魔力チートであっても、恋人に寝首を狙われたらひとたまりも無い。


「まあ奴隷は主人を裏切れねぇからな。ほら、愛玩奴隷はこの奥だ」

「そゆこと。見させてもらうね」


 説明する為の従業員を伴い、奥の部屋へ入る。人が檻の中にいるのは異様な光景だが、想像していたような不快感はない。

 というのも大事にされているのか、みんな目に生気がある。奴隷と聞いてみんな死んだ目をしているものだと思っていたのだが、思ったより大事にされているようだ。

 まあ大事な商品なのだから考えれば当たり前か。


「うーん」


 腕を組んで部屋を見回した。私のような女は好条件なのか、笑顔で手まねきしたりウインクしたりと好意的なアピールをしてくれる。だがみんな可愛いすぎる。弾力がありそうな肌にぷにっとしたほっぺ。

 …多分私より一回りは若いのでは。あかん、犯罪だ。


「もう少し私と年が近い男性はいますか?」

「あ、そうなのですね。失礼ですがおいくつですか?」


 控えていた従業員のお姉さんに問いかけると、そう聞かれたので自分の年齢を答えた。すると一瞬停止した後「少々お待ち下さい」と言って先程の店主がいる部屋へ走っていった。


 確かにこの世界は私より大人な外見の人が多いけど、そこまで若く見られていたか。ここはお約束を踏むのだな。


「ドラゴンさん、そんな年齢だったのか。見えねえな」


 お姉さんと一緒に店主がやって来て開口一番そう言った。


「褒め言葉だと受け取っておく」

「年齢が近い男の愛玩奴隷か。残念だがうちの店にはいねえな」

「そうなんだ…」


 ここはこの街で一番大きくて高級な奴隷商だ。ここにいないとなると探すのが難しい。


「愛玩でなくてもいいなら条件が合いそうな剣闘奴隷が他所にいるが…」

「本当? 会ってみたいな。どこの店?」


 流石大手優良企業。他社であっても顧客の望むものを提供してくれるとは。

 側にいてくれるなら何でもいい。愛玩で無くても契約があれば私を絶対に裏切らないのだから。欲を言うなら見た目がタイプだとなお嬉しい。

 そんな欲望丸出しな私とは裏腹に、店主は何やら考え込んでいる様子だ。


「だがなぁ、ここと違って少しアレなんだよなあ…」

「?」

「まあいいか。明日までにこの店に用意しておくから、またここに来な」

「良いの? ありがとう」

「ドラゴンさんには1年前にこの街を救って貰ったからな。これくらいはいいって事よ。買う場合値引きはしねえけどな」


 がははと笑って手を振る店主にお礼を言って店を出た。


「どんな人だろ。明日が楽しみ!」


 そう言って私は、想像とだいぶ違う奴隷に驚く事を知らずにわくわくと家へ帰った。




※※※



「こんにちは!」

「ドラゴンさん朝早えな」

「楽しみ過ぎて!」

「…そうか。こんないい年した女が可哀想に…」

「うっさいわ」


 開店と同時に店に入れば、哀れみの目を向けられた。だがそんな目線など気にしない。私には楽しみがあるのだから!


「こっちだ」


 鼻歌を歌いそうな私にそれ以上は何も言わず、店主は昨日入った部屋と同じ所に案内した。そこには昨日無かった新しいケージが置いてある。


「…!!」


 そこには私の理想そのものがいた。藤の花の色を薄めた髪の色に宝石のように輝く水色の瞳。美しい色合いに加えて、顔のパーツがそれぞれ完璧に配置されている。所謂人外系の美形さんである。


「こいつは剣闘奴隷。腕はDランクだ。魔法適正はゼロ」


 欲望に正直な私は店主の説明ガン無視で、目の前の美貌の塊を上から下まで舐めるように見つめていた。そんな私に美人さんは不信げに眉をひそめ、店主に向き直った。


 魔物が闊歩するこの世界は強い男がモテる。外見で言うと筋肉もりもりな人間か魔力が高い人間がモテるので、おそらく私の下心満載な視線はバレなかったのだろう。


「正直剣闘奴隷としては微妙だ。最近愛玩への…」

「いやだ!!」


 店主の説明の途中で人外美形(人間)が突然大声を上げた。


「愛玩奴隷になど誰がなるか! あんな己の誇りを汚すようなものになど絶対にならない!!」


 儚げな印象からは想像出来ない程の音量で叫ばれ、空気がビリビリする。

 奴隷身分でここまで自己主張が強い人は珍しい。この階級社会ではそれに逆らう事は良しとされないのだ。もしかして彼は元々奴隷階級では無いのかもしれない。


 その証拠に、周りの愛玩奴隷から冷めた視線を集めている。それもそうだ。彼らは奴隷ゆえに自分の立場を誰よりも理解し、その上で上手く立ち回っている。昨日私に可愛らしく振る舞ったのも計算だろう。


 それは彼らが自分に出来る範囲での精一杯の処世術なのだ。反抗的な態度では店主や客に嫌われる。使い道が無ければ大切にされない。それが分かっている上で、愛玩という立場を受け入れているのだ。それをこんな風に否定されたら彼らとて良い気分では無いだろう。


「例えこの命が果てようとも魂を売るようなことはしない!」


 でもまあ彼の言っている事も理解出来る。彼の様子からして、多分何らかの理由で奴隷階級に落ちたのだろう。その理不尽を呑み込めないうちに、誰とも分からない奴の情夫になれと言われて嫌だろうな。


 私だって一歩違ったらこの世界で奴隷になっていたかもしれない。最初訪れた村に悪人がいなかった幸運と、魔力チートのおかげで今の暮らしがあるのだ。訳もなく知らないおっさんの娼婦になるなど想像するだけで吐き気がする。













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