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私の奴隷はとても可愛い。〜XXXXX〜  作者: せろり
1章 ガール ミーツ ボーイ 〜そうして僕は彼女に出会った〜
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「ふむ。ではその時具体的にどのような会話をしたんだ?」

「…………」


 少し緊張しながらお風呂から出て寝室に戻ったら、いつものようにルカに髪を丁寧に乾かされた。そしてベッドに寝かされたので乙女のようにドキマギしていたら、そのまま丁寧に分厚い布団を掛けられた。目が点になって固まっていると、ルカは普段の様子と変わらずにそのまま尋問という名の今日あった出来事の聴取が始まった。


「えと、その、通常だと無茶な要求をされたのでチャンスとばかりに転移門の要求をしました……」

「なんて大胆な……いくらS級といえど一国の王が素直に要望を聞かないだろう」

「はい……。なので追加で特大の魔石三つと一角獣の角を献上しました……」

「一角獣? そんなものまで持っていたのか」

「…………」


 あれ? マジで普通の会話なんだけど。寝室だよ? ここ。

 まあルカの頭にリッカが留まってた時点でなんとなく予想してましたけどね。ちなみにルカはベッドから少し離れた位置に置いてある椅子に座っている。ガードはバッチリだ。ははは。


「一応使用者の登録を命じられてます」

「妥当だな。本来は貴族以外は所有することも許されない筈だが。……S級冒険者と繋がりを持っておきたいという意図もあるのだろう」

「…………」


 考え込むように顎に手を当てるルカは相変わらず美しいんだけど、なんだか据え膳されている気分でもやもやする。しかし彼との出会いを考えると手は出せぬ……。

 くそお。ちょっとルカ、君ももうちょっと危機感持った方がいいよ。ご主人様、結構強いんだよ。やろうとすれば力尽くとか出来ちゃうんだから。……ルカが嫌がるだろうからしないけどさ。


 私の欲望と理性の戦いなど知らない彼は、真面目に今日の出来事の聞き込みを続ける。私は悶々としながら、けれどそんな態度は(おくび)にも出さずに淡々と答え、気付けば温かい毛布の中で眠っていた。





「…………それでどうやって青狼を倒した……」


 続けて質問を口に出したところ、すうすうと寝息が聞こえてきたのでベッドを覗き込む。そこには体を丸くして寝入るミサキがいた。

 ……疲れていると言っていた事を思い出して、少し反省する。


「…………」


 初めて見る彼女の寝顔に無意識に手が伸びる。触れそうになったところでハッとして腕を引っ込めた。

 普段は許可があるので触っても問題ない。自分の身支度に無頓着過ぎる彼女に我慢出来なくなり、自分から提案したら思いの外簡単に許された。

 しかし今は流石に駄目だろう。そもそも意識の無い女性に触れるのはマナー違反だ。


「……それに私は奴隷だ」


 彼女には秘密にしている、この秘めた想いが叶うはずないだろう。ミサキは普段から自分に自由を許し過ぎているせいで、つい忘れそうになってしまう。


「…………」


 戒めるように触れた首の魔道具。そこにはミサキが持ち主であることを示す刻印が刻んである。これは奴隷が主人の命令違反をしたり、危害を加えようとすると痛みを与える物だ。未だこの家に来てから一度も発動してないが、以前はよく起動していたなと思い出す。


 反抗的な態度だとか、弱くて使い物にならないだとか、様々な理由で私はよく返品されていた。

 罰として食事を抜かれるのは当たり前。わざと多めの仕事を与えられ、命令違反だと理不尽な理由で常に首輪は締まっていたし、教育と言われて鞭を打たれたことすらあった。


 常に空腹と痛みで朦朧とする意識の中、新たに追加される仕事に取り組むが、当然良い結果は出せやしない。当然だ。それに彼らの中には、娯楽や八つ当たりで奴隷に当たる者もいるのだから。


 それに魔力も武芸も無い自分は、数いる奴隷の中でも特に役に立たなかった。ゆえに主に荷物持ちや魔物退治の囮役として使われる事が多かったのだが、大きな怪我を負わなかった事は幸運だったのかもしれない。


 しかし、ある日どこぞの物好きが自分を愛でたいと言い出した。私より優れた体格、魔力を持つ魅力的な者は他に何人もいるのに、その者は普通の相手では飽きたと言う。

 その言葉を聞いた瞬間、ぼんやりしていた意識が覚醒し、激しい嫌悪感を覚えた。必死に抵抗し、それに比例して締まる首輪。呼吸が困難になり生理的に垂れる涎。きっと酷い顔をしていたのに、その男は実に愉しそうに笑いながら私を見ていた。最終的には私に興味が無くなって事なきを得たが。奴隷の扱いなんてその程度のものだ。持ち主の気分一つで左右されるほどに軽い。



「…………」


 今更そんな記憶に恐怖感は無いけれど、嫌な顔を思い出してしまったと眉間に皺が寄る。ふるふると頭を振って、ベッドで眠るミサキを見つめた。

 ……自分は、今ここにいる。


 そういえば、彼女は私の過去を聞かないなと思った。新しい主人に仕える時、大体二パターンの反応に分かれる。


 一つは奴隷自体に興味が無く、一切何も聞かずただ新しい仕事の指示をするタイプ。二つ目は、前は何をしてきたかと根掘り葉掘り聞いてくるタイプだ。


 前者は気兼ねなく一見良い関係に思えるが、逆に言えば配置さえ出来れば経験なんて関係ないので、危険なものが多い。当然拒否権は無いし、情も無い。

 後者は効率を重視し経験のある仕事を与えられるか、ただ単に嫌な記憶を思い出させて楽しみたい嫌な奴であるパターンが多い。


 ミサキは聞かないタイプだったが、何か彼女が指定した仕事をやれとは言わなかった。


 ただ私が剣闘奴隷として購入してくれと頼んだから剣を握らせた。……結果役に立たなかったので、前に経験していた囮や盾役になると提案したら反対はされたが。だがその代わりに何かをやれとは命令されなかった。




全年齢の壁

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