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私の奴隷はとても可愛い。〜XXXXX〜  作者: せろり
1章 ガール ミーツ ボーイ 〜そうして僕は彼女に出会った〜
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「ルカ―! リッカー! たっだいまー!!」


 ギルドに終了報告しに行けば、質問攻めにしてきたギルドマスターを押しのけてそのまま急いで帰宅した。きちんと報告は受付の職員さんにしたよ? ギルドマスターの話は二度手間になる内容だったので無視した。あとは職員さんに聞いてくれ。本日の業務時間は終了しました。この世界で残業はしないと心に決めている。ノーモア! サービス残業!


「ミサキ!!」

「ピピピ!」


 大声で帰宅を宣言しながらドアを開ければ、熱烈な歓迎を受けた。勢い良すぎて額をぶつけたが、普段接触を控えているルカからのハグは役得なので文句はない。

 グリグリと頬に体を全力で擦り付けてくる小鳥も大変可愛らしいので、させたいようにさせておく。従魔は契約主が重傷を負ったら遠くにいても分かる筈なので、リッカはルカと違って心配はしてなかっただろう。多分ノリだ。


「心配させちゃったね。何もなかったから大丈夫だよ」

「非常事態のようだったが……」

「怪我一つしてないよー」


 私の話を聞きながらも疑い深いルカは体を離し、じろじろと私の言葉が本当かどうか確認している。いやん。


「……怪我はないようだな」

「でしょ」


 一通りチェックいて安心したルカはふぅ、と息を吐いた。本気で心配してくれた様に、内心ふざけてしまってなんだか申し訳ないと思ったので心の中で謝罪しておく。ついでにまだ猛烈にスリスリしているリッカの頭も撫でておいた。


「夕飯の準備は出来ている」

「やったー! お腹ぺこぺこだから嬉しい」

「ピピ」


 落ち着いたルカとリッカに促され、リビングに向かう。手を洗ってから配膳を手伝い、食事をする。うん。酒屋でワイワイ飲むのも楽しいけど、今はルカとリッカと一緒に食べるご飯が一番好きだなあ。



「そんでねー。内容は青狼の討伐だし、優秀なメンバーも協力してくれたから、依頼自体は危ないことはなかったの」

「……そうか。危険が無いのであればよかった」

「ぐはっ」


 ルカのホッとした表情に心臓を射抜かれている私の隣で、リッカが首を傾げながらガッツガッツと大きな氷を食べている。やめて、そんなつぶらな瞳で私を見ないでおくれ。



「あ、そういえば転移門設置することになったから、一つ部屋を整えたいな」

「は?」


 贅沢にもリッカとルカの共同作業により作成されたジャーベットをデザートに楽しみながら、今日貰った戦利品を思い出してルカに告げた。家の管理は彼がしているので、どの部屋がいいかとかその辺りの相談をしたい。


「? どうかした?」

「……色々と聞きたい事があるが、まずは何故突然転移門の話になった」

「今日の仕事の報酬で設置許可を貰ったから?」


 スプーンを置いてフルフルと震え出したルカ。シャーベット食べて体が冷えたのかな。


「寒いの? ブランケット持ってこようか?」

「違う。そもそも主がそのような事はしなくていい」

「えー。別にいいじゃん」

「……ああ、もう。今はその話は置いといて、転移門の事だ」


 ルカはなんだかんだで遠慮がちなので、立ち上がって毛布を持ってこようとしたところ、手を掴まれて止められた。


「何故転移門を設置することになった」

「? 最近転移門欲しいなーって話してたじゃん? で、丁度貰えそうな機会があったから、今日許可もぎ取って来た」

「…………誰に?」

「国王陛下。……あ」


 片手で顔を覆うルカにごめんと謝る。インテリア感覚で転移門設置することにワクワクしていた。正直王様とかどうでもよすぎて忘れてた。


「……そんなに今日の依頼は大事(おおごと)だったのか?」

「ごめんて。でも本当に危険な仕事じゃなかったよ」

「…………」


 疑いの眼差しを向けるルカに弁解する。何気に私の予定を把握しておきたい彼は、仕事関連で隠し事をされることを酷く嫌う。そうなったのは一緒にギルドの仕事をしなくなってからだ。おそらく自分の知らない所で主が危険な目にあっていないか気が気でないのだろう。

 でももし私の身に何か起こってもルカの安全は保障しているから安心して欲しい。

 ……まあ、それはまだ彼に伝えていないから仕方ないのかもしれないが。


「最初から順番に話してくれないか」

「えええ……。それはちょっと面倒くさい……」

「……ホットミルクとチョコレートケーキ」

「! ぐ。……ぐぐぐ。…………っ、……………………。……今日は、食べない」

「…………」


 ルカは好ましいが、全て言う事を聞いているわけではない。真面目なルカと基本ものぐさな私は、時々このように小さな攻防戦が起こる。ルカが何かを要求することはあまりないのだが、たまに譲れない事もあるらしく時々このように私の好物で釣ってくる。私の事を理解していて嬉しいやらけしからんやらで複雑だ。なお七割の確率で私が負けている。


「……今日は疲れたから寝る」

「…………」

「お風呂入ってベッドでごろごろする」

「…………明日は」

「……明日は多分、朝から色々呼び出されると思う」

「…………」

「…………」


 沈黙が痛い。だけど本当に今日はもう寝たかった。なんだかんだで長時間目と神経を酷使している。魔力的な消費は無かったけれど、集中力はまた別だ。ちょっと疲れている。明日も仕事だし、早く毛布に包まってだらだらしたい。


「そんなに聞きたいなら私の部屋にでも来るー? そこで話すなら構わないよ」


 だからこそ、ルカが諦める提案をしてみたんだけど。


「…………。……ミサキが良いのであれば」

「?!」


 予想外なルカの了承に目玉が飛び出るかと思った。だって私の寝室に入るという事だ。


「では、また後で」

「…………」


 そう言ってルカは食器を片付けてリビングから出て行った。暫く呆然としていた私だが、とりあえず体が睡眠を欲しているのは本当なので、思考停止のまま風呂へ向かった。






 

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