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私の奴隷はとても可愛い。〜XXXXX〜  作者: せろり
1章 ガール ミーツ ボーイ 〜そうして僕は彼女に出会った〜
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「いやぁ、すごいねぇ」


 目的地に向かう道中、ユチが手の平に魔石を転がしながら呟いた。


「本当だよね。大きさもそうだけど、このサイズで魔力が満タンに満たされてる魔石久しぶりに見た」

「…………(コクコク)」


 ユチの言葉にツヴァイとアルバが同意する。後ろの会話を聞きながら、俺も内心頷いた。


 Aランクの俺たちは、正直魔石不足に陥る事は少ない。それはミサキさんも当然知っている。けれどあえて渡したのは、俺たちの戦い方を知っていたからだろう。俺たちは余分な魔石を持っていても、緊急時以外で全部の魔力を使う事はない。


「思いっきり魔力を使えってことだよねぇ〜」

「今回は三パーティ分働かないといけないから助かるね」

「依頼帰りのタイミングだったしぃ~ジリ貧になるかと思ってたよぉ」


 別に俺たちだけではないけれど、戦闘経験を積んだ者ほど、魔力の使い方次第で自分たちの命が左右されることを知っている。多くの魔力を用意していても、湯水のように使っていたらいつかは底をつく。質の良い魔石がいつも魔物からドロップするわけではないからだ。


 考えなしに魔力配分を間違えると地獄を見ることになる。命の危険とはいつも唐突にやってくるものだ。依頼された魔物退治が終わっても、その帰り道に魔物の群れや強力な魔物に出くわす事なんてざらにあるし、急な襲撃を受ける可能性も捨ててはならない。確率的にはとても低いのだが、年に何人かはそういう理由で帰ってこない者がいるのだ。


 数年前、この街を襲ったドラゴンの時もそうだった。いったい誰がSランクの魔物がいきなり王都を襲うと予測出来ただろうか。そもそもドラゴンに遭遇したこと自体が初めてだった。


 城の兵士も、その時街にいた冒険者たちも、戦える者は勝てないと分かりながらも逃げる事は許されなかった。


 それでも国や街を守るため、家族や仲間を守るため、敵わないとうっすら理解しながらも武器を取ったあの日が懐かしい。蹂躙される街は成す術なく崩れ、自分も死を覚悟したそんな時、彼女は颯爽と現れたのだ。


 誰もが予想していなかっただろう。当時C級冒険者と下に見られていた彼女が、ドラゴンの首を気持ち良い程スッパリと切り落とす事なんて。



「こぉんな立派な魔石を~ポンと四人分軽々と渡すなんて流石トップランクだよねぇ」


 初めて彼女を認識した時の記憶に思いを馳せていたところ、仲間の雑談で意識が戻る。みんなの手には魔力がふんだんに含まれた魔石がそれぞれ握られていた。

 この魔力量なら、たとえ八時間最大火力の魔法を使い続けても魔力が尽きる事はないだろう。もしかして普通に使ったら半年は持つんじゃないか? 実はこの依頼の前に違う仕事から戻ったばかりで、充分な準備が整っていなかったのでこの魔力譲渡は大変有難い。難易度自体はAといえど、労力は三倍だしな。


「正直、今回は貴族様からの依頼で断れなかったから助かったよ」

「……おそらくあの人の事だから、こっちの状況分かってたんだろうね。多分私物だよ、これ」

「まじでぇ。太っ腹すぎないぃ~? 結構な値段するでしょ~」


 このパーティーのリーダーである俺は彼女を尊敬している。元々地方出身で旅をしながら拠点を転々としてきた俺たちは、色々な人を見てきた。


 実力主義なギルドでは明確な上下関係があるし、血の気も多いので理不尽な事が多い。そんな中、ちっとも偉ぶらないこの国唯一のS級冒険者。本当の強者とは、驕らないものなのかと驚愕した。

 長い間冒険者をしているので、横暴な人も沢山見てきた。それなのに自分が会って来た中で一番最強であろう彼女は謙虚で思慮深い。自分たちのような下位ランクの冒険者の為に私物を渡してまで身の心配をするし、冒険者だけでなくギルド職員一人一人とも丁寧に接する。


「……彼女は魔石くらいで恩に着せない人さ」


 自分たちは、今ではAランク冒険者と持て囃されているが、ここに来るまで沢山の辛酸を舐めてきた。だからこそ、強いだけではなく誰とでも対等に接しようとする彼女を俺は尊敬している。


「それよりも、自分たちの仕事と彼女に頼まれた事をやり遂げないとな」

「頼まれた事?」


 握り込んでも余りある大きな魔石をパチリ、と剣に嵌める。首を傾げるツヴァイに俺は笑顔で答えた。


「”必ず全員無事に帰ること”」

「!」

「あ~」

「…………(コクリ)」


 晴れやかな笑顔で仲間に宣言する。ミサキさんは尊敬であり目標だけど、何よりも仲間たちが一番大切だ。魔石の存在で気が緩んでいたが、そろそろ目的地。

 幸い、今回苦戦を強いられると思っていた魔力問題はミサキさんのおかげで解決した。ここからは仕事の時間。いかにスムーズに彼女の元へ魔物を誘導出来るかが試される。


「……S級冒険者様からの命令なら応えないとね」


 俺の言葉に目を瞬かせていたメンバーが、一拍置いてからクスクスと笑う。冗談めいた口調だったが、その瞳には自分と同じく敬意の念がこもっていた。





覚えなくてもいいメンバー紹介

・ノーリ(男):リーダー。アタッカー

・ツヴァイ(男):ステルス系斥候

・ユチ(女):後衛補助

・アルバ(男):タンク

戦闘スタイル:慎重、堅実派。効率性より確実性を重視する。

ちなみに上から1.2.3.4と数字になってます

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